ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

映画『女王陛下のお気に入り』

f:id:shashosha70:20190513165206j:plain

(写真1 映画館で配布されていたパンフレットから引用)

俗悪な娯楽性

 18世紀初頭のイギリスの宮廷が舞台。アン女王の治世下にあり、ルイ14世統治下のフランスと戦争中という時代。
 主要な登場人物は、アン女王(オリヴィア・コールマン)その人と、その側近で女官長のレディ・モールバラ=ファーストネームサラ(レイチェル・ワイズ)。さらに、召使いのアビゲイル(エマ・ストーン)。映画はこの三人が繰り広げる愛憎劇という様相。
 アンは病身で気まぐれ。アンとサラは同性愛の関係でもあり、サラが政治を壟断している。アビゲイルはサラのいとこなのだが、没落していたところを拾われていて、機知を活かして女官に取り立てられ、次第にアンの懐にも入り込んでいく。
 時あたかもフランスと交戦中のところ、サラはアンをたきつけて戦争遂行を国策にしていくのだが、戦争に反対する陣営はラビゲイルを取り込んで女王の考えを変えさせようと画策する。もとよりラビゲイルにしてものし上がる野望を持っており、やがてサラの座を脅かしていく。
 ストーリーはこれだけ。しかし、内容的には徹底して退嬰的であり、しかも表現は俗悪。豪華な衣装ときらびやかな舞台設定なのだが、美しさは感じられず、グロテスクですらある。
 薄暗く陰影の深い映像がおぞましさを際立たせており、緊張感あるカメラワークが観る者を惹きつけていく。
 大変娯楽性の高い映画だが、しかしそれだけのこと。私には悪趣味にしか思われなかった。数々の映画賞に輝いたがどうだったのか。ただ一つ付け加えれば、コールマンの演技は、表面上半分ぼけていたように見せかけていたアン女王のしたたかさぶりを見事に演じきっていた。ヨルゴス・ランティモ監督。