ABABA’s ノート

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映画『蜘蛛の巣を払う女』

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(写真1 映画館に掲示されていた案内板から引用)

ミレニアム4の映画化

 ややくどくなるが、原作と映画化双方の歩みを簡単におさらいしておこう。
 スウェーデンミステリーの傑作スティーグ・ラーソン作ミレニアムシリーズは、2011年(日本語版刊行)の第1部から世界的大ベストセラーとなって第3部まで刊行された。そして第1部の『ドラゴン・タトゥーの女』が2012年(日本公開)同名で映画化されこれも大ヒットとなった。
 ところが、作者のラーソンが急逝し、ミレニアムシリーズは終了したかに思えたが、ダヴィッド・ラーゲルクランツがラーソンの衣鉢を継ぎミレニアムシリーズの第4部として『蜘蛛の巣を払う女』を上梓した。2017年。設定、登場人物が同じばかりか、スリリングな展開など作風も承継されていた。
 そして、この第4部を同名で映画化したのが本作というわけである。ただし、映画化にあたって、スタッフやキャストは『ドラゴンタトゥーの女』から変更となった。
 登場人物には、主人公の天才ハッカーリスベット・サランデルはじめミレニアム誌記者のミカエル・ブルムクヴェストや編集長のエリカ・ベルジェなどと第3部までの主要な人物が揃っていた。
 人工知能研究の世界的権威フランス・バルデルからリスベットに対し自身が開発したプログラムをNSA(アメリカ国家安全保障局)から取り戻すよう依頼があった。ファイヤーフォールと呼ばれるそのプログラムは、個人用PCでも核システムに侵入できるというもので、アメリカやロシアが獲得を狙っており、情報機関に渡る前に回収しようとしていた。
 リスベットはNSAのシステムに侵入し回収に成功するが、バルデルが死んでしまい、プログラムは開かないまま。残ったのはバルデルの自閉症の息子アウグスト。また、プログラムの回収に成功したリスベットに対し、各国の情報機関が群がってくる。特にロシアが脅威だった。
 映画のストーリーはやや単調。リスベットとプログラムを狙う情報機関とのアクションドラマの様相だ。それはすさまじいもので、これが最大の見物。
 ただ、原作が描いていたシリアスな情報戦の様相はやや弱まっていた。もちろん、リスベットが得意とするハッカー行為や、国中に据え付けられた監視カメラによる追跡などと新しい時代の戦いを描いてはいるのだが、どこかで、ドラマは単純になっていた。だから、映画が原作と同じである必要はないが、原作の持つ重層的な面白さにはやや欠けていた。
 我々は最近ハッカー行為が国家を脅かしかねないと気づき始めているが、それが最高レベルで描かれているのが原作だったのだが、映画は徹底的にアクションドラマに終始していた。
 もう一つ。原作は第4部に至ってもミレニアムシリーズの主要な登場人物をそのままに継承されていたのだが、映画化にあたって第1部『ドラゴンタトゥーの女』からは配役も変わってしまって、どこか感情移入できなかった。とくに、リスベットとミカエルの配役にはがっかりさせられた。