ABABA’s ノート

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フェルメール展

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(写真1 「牛乳を注ぐ女」の写真を手にかざしてみたところ)

35分の9ということ

 会期一か月を切ったところでやっと見た。昨年の10月から上野の森美術館で開催されていて、フェルメール好きとしては早く見たいとはやる気持ちがなかったわけではないがここまでじっと待っていた。
 会場の上野の森美術館には外壁に大きなパネルが掲示されてあって、そこには、VERMEER 9/35とあった。フェルメールファンならすぐに気づくことだが、フェルメール作品は現存するもの約35点。それも世界中の美術館などに散らばっているのだが、このうち何と9点もが来日したということ。ただし、期間中、展示替えがあって一度に見られるのは8点まで。いずれにしてもこれほどまとまってフェルメール作品が一堂に展示されるというのは稀なこと。日本ではちょうど10年前に東京都美術館で開催されたフェルメール展に7点が展示されて以来のこと。
 日時指定入場制だし、会期も3カ月を過ぎていて人々の出足も落ち着いたものであろうか、大きな混雑もなく入場することができた。とはいっても日本人に人気のフェルメールのこと、まだまだ結構な賑わいではあった。
 会場に入ると、フェルメールとほぼ同時代の17世紀オランダ絵画がしばらく続く。風俗画が多いし、フェルメールと似たような画題、構図の絵が少なくない。デ・ホーホやヤン・ステーンなどと私にもすでに馴染みの画家の作品が並んでいて、いきおいフェルメールと比較してみたくなる。
 こうした作品が40点ほども展示されていた後にフェルメールルームとなった。展示室の一室が丸々フェルメール作品に集約されており、ここにフェルメール作品が8点も展示されていていかにも豪華。ここに至ってじっくり見ようと姿勢を転じた人が多くなったせいか、部屋の密度が一挙に上がっていた。
 最も人だかりが多かったのは「牛乳を注ぐ女」であったろうか。さりげない日常の一コマを切り取って傑作である。計算しつくされた光と影、緻密に描き込まれたディテール、まるで牛乳を注ぐ音までもが聞こえてきそうな静謐さ。いかにもフェルメールらしい秀逸な作品である。
 ストーリーを想起させて面白いのは「手紙を書く婦人と召使い」だろう。この場面、手紙を書いている女主人よりも、背後に立って窓の外を見ている召使いこそが主役であろう。召使いの表情が全てを物語っている。
 私が見たかったのは「取り持ち女」。期間中の展示替えがあって、この作品だけは1月9日からの展示だった。それで、フェルメール展へ足を運ぶのもここまで待っていたのだった。何しろ、この展覧会は入場料が2,500円と高くて、二度も三度も見るわけにはいかなかった。昨年末で展示が終わった「赤い帽子の女」など展示替えもあったことだし、二度目の来場者への割引サービスがあっても良かったのではないかと思われた。「取り持ち女」そのものは取り立てるほどのものではなくて、フェルメールの作品という以上のものではないのだが、私個人としてはかつて見たことがあるものかどうか確認したかったのだった。
 なお、冒頭の写真1は、「牛乳を注ぐ女」の写真を持参し、会場の一角で手にかざしている様子のもの。このやり方は、植本一子著『フェルメール』から学んだ。美術館で写真撮影が許可されないことは往々にしてあること。こういうとき、美術館で購入した絵はがきから引用することが多いのだが、植本さんのやり方はとても参考になると思いやってみた。

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(写真2 会場の上野の森美術館。外壁の大きな看板には9/35の表示が見える)