ABABA’s ノート

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小さな音楽会は・く・あ・ぽこ

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(写真1 演奏開始直前の様子)

ソプラノ大津佐知子&ピアノ森知英

 「は・く・あ・ぽこ」というちょっと変わった題名のコンサートが11日、新宿のマエストローラ音楽院で行われた。
 出演したのは、ソプラノ大津佐知子、ピアノ森知英。ともに著名な音楽家だが、演目は、歌曲を中心に計9曲。
 このうち、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」は、ピアノの歌曲としてよく知られた曲だが、ヴァイオリンや様々な楽器で演奏されることが多くて、実は歌われるのは珍しいようで、この作品を大津は初め哀調を帯びた歌い出しから次第に盛り上がる曲想を力強く歌いきっていた。
 また、石川啄木の詞に越谷達之助が曲を付けた「初恋」では、やはり曲想をつかんで朗々と歌い上げて感動的だった。続いて歌われた宮澤賢治詞、保坂文昭曲の「星めぐりの歌」など賢治の世界を彷彿とさせた。さらに、プッチーニの歌劇『蝶々夫人』から「ある晴れた日に」では、初めイタリア語、途中から日本語、そして締めくくりに再びイタリア語と歌い分けていて面白い趣向だった。それも、言語の変わり目を感じさせない1本の流れるような歌いっぷりで感心した。
 大津さんの歌は、ソプラノ歌手としての声の素晴らしさに加え、表情なども豊かで聴き惚れるような内容だった。また、森さんのピアノはもはや一流のピアニストらしいオリジナリティの高い卓越した演奏だった。
 ところで、大津さんと森さんは、同じ高校の同級生だとのこと。岩手県立盛岡第一高等学校昭和63年卒。
 森さんは、高校時代から頭角を現し、藝大を出てベートーヴェン国際ピアノコンクール第4席入賞やショパン国際ピアノコンクールのデュプロマなど数々のピアノコンクールで入賞を果たしてきた第一人者。毎年のリサイタルでは多くのファンを魅了している。
 一方、大津さんは、高校卒業後は東京女子大に進み日本文学を専攻、出版社勤務の傍らアマチュアオペラ団に所属していたが、渡米してジュリアード音楽院を修了、声楽家としてプロの道を踏み出したという異色の経歴の持ち主。現在は様々なオペラやコンサートに出演し人気を博している。
 それが、1年前の高校同期の新年会で再会、意気投合して二人で何かやってみようかということに。それで実現したのがこのたびの音楽会。大津さんの歌に森さんが伴奏した豪華な組み合わせで、高校同期ならでは実現した。
 音楽会の題名、は・く・あ・ぽこの白堊とは、二人が卒業した高校の愛称。明治13年の創立以来四代続けて校舎が白壁の白堊だったところからこの名で呼ばれており、また、ぽことは音楽用語で少しずつを意味するポコ ア ポコから引用されたもので、小さな音楽会ということで名づけられたようだ。なお、この日歌われた石川啄木や宮澤賢治もこの白堊校(旧制盛岡中学/現盛岡一高)の同窓生。
 音楽会の会場も小さなサロンといった様子で、いかにもポコらしいセッティングで、親しみやすくも素晴らしい音楽を堪能することができたコンサートだった。

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(写真2 演奏終了後の森知英さん(左)と大津佐知子さん)