ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

ムンク展

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(写真1 会場で配布されていたパンフレットから引用。中央の絵が「叫び」)

共鳴する魂の叫び

 上野公園の東京都美術館で開催されている。大変混んでいるというので、会期の半ばが過ぎるまで待って昨年末に訪れた。これが正解で、土曜日だったのだがたいした混雑もなくゆっくり見ることができた。
 100点余りもの作品が展示されていてムンクの画業の全容がわかるようだった。東京でムンクがまとまって見られるのは2007年の国立西洋美術館以来ほぼ10年ぶりで、特に今回は代表作「叫び」が来日して注目された。
 どうやらムンクは、同じモチーフを繰り返し何度も描いていて、展示も同じシリーズをくくって行っていた。ムンクの言葉を借りるならフリーズということだろう。
 一つ特徴的だったことは数多くの自画像が展示されていたことで、何でもムンクは生涯80点もの自画像を描いたということである。これを制作順に丹念に見ていけば、ムンクの自我の軌跡がわかるようだった。このうち1882年というから初期の作品だろうがその「自画像」は、昂然として強い自我が見られた。
 ムンクといえば不安や絶望にさいなまされた作品にこそ真骨頂があるが、その系譜に連なる「叫び」(1910)、「絶望」(1894)、「不安」(1896)がぞろって展示されていたことは大きな意味があった。
 赤い空、フィヨルド、橋、不安と絶望におののく顔などと、いずれも不気味なあの同じモチーフから構成されていて、ムンクの生と死の不安が直截に伝わってくる。
 会場には、「私は見えるものを描くのではなく、見たものを描くのだ」という言葉が掲示されていて印象深かった。
 ムンクの絵は一目見たら忘れがたく、いつまでも印象に残っている。ただし、リビングルームに飾っておきたいとは私は思わない。つまり、私にとってはそういう絵だということ。