ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

村松拓『海の見える駅』

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旅情がかき立てられる

 全国各地の海の見える駅が北から南まで70カ所取り上げられている。
 海の見える駅はつまり海が映える駅でもあるわけで、美しいカラー写真で構成されている。それも、一つの駅に1枚や2枚の写真ではなくて数枚は載せられているからとても旅情が深まる。
 汽車旅で、わざわざ駅だけを見るために途中下車するというようなことは、よほどの好事家でもない限りないものであろうが、本書を読んでいると叙情が広がって、次の旅の機会にはこの駅で降りてみようと思いたくなる、そう思わせられる魅力的な駅が並んでいる。
 私は、これまでに全国の全ての鉄道全線を一度は乗ったことがあるが、その経験と本書の記事写真から特筆したいものを幾つか選んでみた。
 JR常磐線日立駅(茨城県日立市)。この駅には私も降り立ったことがあるが、妹島和世さん設計のモダンな駅舎と海の風景が印象的に取り上げられている。ちなみに、妹島さんはここ日立市の出身である。
 JR牟岐線田井ノ浜駅(徳島県海部郡美浜町)。まるで砂浜に建つ駅のようで、著者は海水浴場まで徒歩0分と書いている。
 JR山陰本線餘部駅(兵庫県美方郡香美町)。私も今年訪れたばかりだが、二代目の余部橋梁と含め、鉄道の駅が観光地になっている数少ない駅の一つだ。
 JR大村線千綿駅(長崎県東彼杵郡東彼杵町)。まるでタイムスリップしたかのような駅舎があり、妙に旅情のかき立てられる駅だ。
 ほかにも、釧網本線北浜駅や五能線驫木駅、島原鉄道大三東駅などと人気の高い著名な駅も取り上げられていて興趣が深い。
(雷鳥社刊)