ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

海上保安庁刊『灯台表』

f:id:shashosha70:20181025105036j:plain

日本の灯台総数は929基!

 『灯台表』は、海上保安庁が刊行している書誌。全国の灯台などの航路標識の諸元が収録されており、本来、航海のための業務用のものだが、このたび『灯台表』とはどういうものか興味があって購入してみた。
 実際にも、全国の灯台を訪ね歩いているうちに、たいがいの灯台には灯台の概要を記した看板が海上保安庁や燈光会によって設置されているのだが、稀に看板のない灯台もあって、情報が欲しくなることがあったのだった。
 購入した『灯台表』は第1巻で、日本国内の航路標識が網羅されている。A4判500ページ(うち航路標識リスト404ページ)。平成30年3月発行。なお、第2巻は朝鮮半島や中国、東南アジア、南洋諸島の航路標識が収録されているとのこと。
 ここでいう航路標識とは、灯光、形象、彩色、電波、音響などの手段により船舶の指標とするための施設のこと。
 このうち、一般的には光波標識と呼ばれる灯光や形象・彩色による標識は、灯台のほか灯標や灯浮標などに分類されている。
 これら航路標識には、航路標識番号、名称、位置、灯質、灯高、光達距離、構造・高さなどの要目が明示されている。
 掲載順序は、北海道南岸に始まって北海道を反時計回りに一周して、次は一気に本州の西端に飛び、そのまま日本海岸を北上し津軽海峡を経て太平洋岸に回り込んで南下、瀬戸内海を細かく巡って九州に渡り、南西諸島へと至っている。
 例に一つ抜き出して記載要目を見てみよう。
 一番最初に記載されているのは航路標識番号0001番の白神岬灯台。ローマ字でShirakamimisakiと名称の一部が標記されている。
 位置 41 23.9N  140 11.8E。 つまり北緯41度23分9秒、東経140度11分8秒ということ。
 灯質 単閃白赤互光 毎30秒に白1閃光赤1閃光。ほかにローマ字でAlFlWR30sと併記されており、これは灯質の略記
 灯高 37(単位はmメートル=平均海面から灯火までの高さ)
 光達距離 W17 R16(単位はM海里、1海里=1,852m) つまり、白光が17海里(約31.5キロ)、赤光が16海里(約29.6キロ)ということ。
 構造 白地に赤横帯2本 塔形
 高さ 17(単位はmメートル=灯塔の高さ)
 備考 明弧255°~101°(灯火が照らしている範囲)
 以上が記載されている要目で、こういうデータが細かい字で404ページにわたってびっしり記載されている。なお、住所や初点日の記載はない。これは航路標識としての必要がないからであろう。
 ざっと数えてみたら、7,202基に上った。つまり、これが我が国における航路標識の総基数ということになる。
 これらの航路標識総基数には灯台のみならず灯標、灯浮標や無線方位信号所などの電波標識も含まれるのだが、ちなみに、海上保安庁が平成29年4月1日現在でまとめた航路標識の種類と基数(海上保安庁ホームページ)によれば、航路標識の合計は5,284基となっており、『灯台表』の数と整合しない。
 随分と大きな違いだが、『灯台表』に記載されている橋梁灯(橋桁や橋脚に設置した灯火=これが随分と多い)などは海上保安庁ホームページ上の航路標識の種類と基数にはカウントされていないようだから、この差なのかも知れない。ただし、この見解はあくまでも素人な私の当てずっぽうで、私の計算間違いかも知れないし、正確な理由は私には判断つきかねる。
 海上保安庁ホームページ上の航路標識の種類と基数は一般向けの解説だから、航海の安全に関わる業務上必要な情報を網羅した『灯台表』との違いとなったものであろうと推察するところである。
 なお、これら航路標識のうち、光達距離15海里以上のものについては、国際航路標識番号が併記されている。国際番号とは、英国の灯台表Admiralty List of Lights and Fog Signals Vol..Mに記載されている航路標識番号を指している。ちなみに、白神岬灯台はM6692である。
 また、国際航路標識番号が打たれた光達距離15海里(約27.8キロ)以上の航路標識については、名称が太字になっていて目立つようになっている。
 この太字で記載された航路標識の数を数えてみたら、185基となった。
 随分と少ないが、これは大方の灯台は含まれているものの、花咲灯台(光達距離13海里)や納沙布岬灯台(同14)、知床岬灯台(同12)などと著名な灯台でも含まれていないものがあるからであろう。
 逆に、灯標(障害物に設置した施設)でも、千葉灯標(光達距離15海里)や伊勢湾灯標(同15)などは太字で記載され、国際航路標識番号が打たれているものがある。もっとも、千葉灯標は塔の高さが18メートルもあるし、伊勢湾灯標に至っては20メートルにもなり、並みの灯台よりも大きい。
 それにしても、日本に灯台はいくつあるのであろうか。
 『灯台表』は、航路標識の一切を網羅していて、種類別に分類されて掲載されているものではないし、その数に関する記述もない。
 ただ、海上保安庁ホームページ上の航路標識の種類と基数には、航路標識の基数が種類別に記載されていて、それによると、灯台3,199基、灯標530基、灯浮標1,197基などとなっている。
 こうなると、灯台の数が随分と多いように思われるが、灯台には〝沿岸灯台〟と〝防波堤灯台〟とがあって、海上保安庁ホームページ上の航路標識の種類と基数にはその双方が含まれている。
 どちらも灯台だからそれは当然だが、港の防波堤に立っている灯台とは別に、岬に立っているような我々が一般に灯台とイメージしている灯台、つまりここで沿岸灯台と呼ばれているものはいったいにいくつあるものであろうか。
 そこで、この『灯台表』を1ページ目から丹念にくくって、沿岸灯台だけを拾い出して数えていった。何しろ、細かい字で記載されている400ページ、7,200基に及ぶ航路標識を一つずつ数えていくのだから、根気のいる膨大な作業となったが、そのことはともかく、これによってわかったことは、日本に沿岸灯台は929基あるということだった。見落としやカテゴリーの判断違いなどがあるのだろうが、誤差はせいぜい数パーセント程度にとどまっているのではないか。
 航路標識を扱う専門家あたりには、沿岸灯台と防波堤灯台を区別することは意味がないなどとおしかりを受けるかも知れないが、私なりにはこれをもって「日本の灯台総数は929基」としたいのである。
(日本水路協会発行、定価7,009円税込み)