ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

若桜鉄道(鳥取県)

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(写真1 いかにも終着駅らしい落ち着いた佇まいの若桜駅)

ゆったりと豊かな時間

 湯村温泉からは浜坂に出て、山陰本線で鳥取に向かった。若桜鉄道に乗るのが目的。
 若桜鉄道は、因美線の郡家(こおげ)から若桜を結ぶ第三セクター鉄道。旧国鉄の若桜線で、全線19.2キロ、駅数は9。ただし、列車の半数ほどは因美線を経由して鳥取に直接乗り入れている。
 私も鳥取9時45分発若桜行きに乗車した。鳥取駅4番線ホームから1両のディーゼルワンマン運転。
 郡家で発車を待っていると、反対ホームに鳥取方面に向かう特急はくと1号が入ってきた。京都から東海道本線、山陽本線、智頭急行、因美線を経由してきた陰陽連絡の列車である。

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(写真2 郡家で発車を待つ若桜行き列車)

 若桜行きは特急との接続を待って10時07分の発車。ここからが若桜線内である。
 次の八頭高校までの区間は運賃が100円である。これはおそらく日本で最も安い運賃区間ではないか。営業キロが0.9キロと1キロに満たない区間であるほか、通学する生徒への配慮もあったのかも知れない。もっとも、若桜鉄道は、八頭町や若桜町が出資する第三セクターだから、住民サービスの一環でもあるのだろう。
 なお、帰りのことだが、鳥取行きの列車ではこの八頭高校から生徒が多数乗ってきて列車はあっという間に満員になっていた。まるで全校生徒が乗ってきたのではないか思われたほどだった。聞けば、中間試験の最中だということである。
 列車は、鳥取平野を離れ中国山地へと分け入っていく。因幡船岡という駅があり、このあたりは因幡国であることを知らせてくれる。沿線は進むにつれて林業が盛んになってきたようで、丹比(たんぴ)では、駅前が木材の集荷場になっていた。
 そうこうして終点若桜到着10時37分。小さな鉄道にしては、まずまずの規模の構内を持っていて、いかにも行き止まりの終着駅の風情があった。
 また、カリヤ通りなどと駅前周辺は落ち着いた佇まいの街並みが残っていて、水路には清流が流れているし、のんびり散策したくなうような気分で、この駅に降り立つのは二度目だが、いつ来ても、折り返し列車の出発時間に間が少ないのが恨めしくなるようなことだった。ただ、次の列車にすれば3時間ほども間があるから、この先の旅程を考えると残念ながら折り返し列車にしたのだった。何しろ、私は全国すべての終着駅で下車したことがあるが、これほど情感豊かな駅もないものだった。

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(写真3 旅情が深くなる若桜の街路)