(写真1 自身の作品「往来」と並んで戸田泰生さん)
遊び心も加わって
上野の東京都美術館で開催された絵画の公募展第48回純展に出品されていた。100号の大作である。
戸田さんとは仕事上の関わりがあってもう40数年来も昵懇にさせていただいている旧知の仲。駆け出しのころからで、今に至るも可愛がってもらっている。
戸田さんは退職した70歳から絵筆を持ち始めたのだそうで、現在82歳。藝大受験生も通う教室で基礎から学んだという。そういうこともあってもう素人の域を完全に出ている。
この純展への出品作品だけを振り返ってみても、一昨年第46回の「街の幻影」、昨年第47回の「街、実、虚」と続き、今回も「往来」へと同じ系譜に繋がるもののようだ。
「街の幻影」では、ストーリーや時間の動きまでも感じられる作品となっていて、文部科学大臣賞や東京都知事賞よりも上位にランクされる純展の最高賞受賞となっていたし、「街、実、虚」では、さらに奥行きの感じられる作品となっていた。
そして今年の「往来」では、同じ系譜にありながら、さらに大きな構想力の感じられる作品に仕上がっていた。様々な視点から見た大都会の街角が躍動的だったし、8人の若い女性が横断歩道を渡っている場面などは、右から渡る4人と、左から渡ってきた4人が何とある種のシンメトリーになっていて、凝った面白さや遊び心までもうかがわせるものとなっていた。
完成度の高さから見てももはや一流の仲間入りをした作品と言えるのではないかと思われた。
(写真2 戸田泰生「往来」)