ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

特別展『縄文』

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(写真1 会場の外壁に掲示されていた展覧会の看板)

1万年の美の鼓動

 東京国立博物館で開催されている。
 土偶が好きで機会があれば見ている。特に今回は国宝に指定されている5件の土偶がすべて出展されているというので期待していた。

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(写真2 国宝「縄文の女神」=会場で販売されていた絵はがきから引用)

 「縄文の女神」があり、「中空土偶」があり、「合掌土偶」があった。いつ見ても不思議な魅力がある。これが紀元前3000年から前1000年頃に制作されたものだと知ると深い感慨を覚える。これほど完成度の高いものをどうやって造ったものだろうか、この造形の美しさは何だろうか、土偶にはどういう意味があるのだろうか、このようなことを考えていくと興趣が尽きない。「縄文の女神」の優雅さなど感嘆するばかりだ。
 ただ、残念だったことは、「縄文のビーナス」と「仮面の女神」の2件は展示期間が異なっていてこの日は見ることができなかった。宣伝には縄文の国宝が史上初めてすべて集結したとあったのに、展示品によっては展示期間が異なることは虫眼鏡で見ないと気づかないほど小さく断りがあっただけだった。
 私は「縄文のビーナス」と「仮面の女神」については昨年秋の京都国立博物館の国宝展で見てはいたが、それにしてもこの2件が欠けた国宝土偶の展示ははなはだ不満だった。最も魅力的といわれる「縄文のビーナス」が展示されていなくて残念に思った人は多かったのではないか。
 縄文時代は、およそ紀元前11000年から前1000年頃。この時代に焦点をあてた今回の展覧会には、この時代の土器や壺、鉢に加え国宝以外にも多数の土偶も出品されていて、縄文期の美が概観できるようで充実したものだった。
 この中で感心したのは重文に指定されている「深鉢形土器」(山梨県殿林遺跡出土)で、様式美の極致が感じられた。また、土偶以外で唯一国宝に指定されている「火焔型土器」(新潟県十日町市篠山遺跡出土)は、昨秋の京博の国宝展でも見て感じていたが精緻な意匠の完成度の高さに感嘆した。

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(写真3 重文「深鉢形土器」(山梨県殿林遺跡出土)=会場で販売されていた絵はがきから引用)