ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

講演「池澤夏樹 須賀敦子を語る」

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(写真1 講演会の模様)
『須賀敦子の本棚』刊行記念
 池澤夏樹が須賀敦子を語るトークイベントが昨日16日、池袋コミュニティ・カレッジで開催された。
 池澤が監修者として関わっている『須賀敦子の本棚』(全9巻=河出書房新社)の6月刊行開始を記念したもので、約200席の会場は満員の盛況ぶりだった。参加者の8割は中高年女性で、池澤ファンだったのか、あるいは須賀ファンだったのか、あるいはその両者だったのかも知れない。男性はわずかに1割に過ぎなかった。
 講演で池澤さんは、没後20年になる須賀さんについて、須賀さんは亡くなってますます人気が高まっている好例だとし、初めて読んだときから文学としての完成度に感心したといい、何遍読んでも面白さは深まっていくと切り出していた。
 新シリーズ『須賀敦子の本棚』の刊行について、須賀さん自身が翻訳されたもの、あるいは須賀さんが高評していた作品で構成しており、言わば須賀さんの物差しで選んだものだとしていて、これは(自分が読んで気に入った本を紹介する)書評と原理が一緒だと解説していた。
 また、須賀さんがイタリアから帰国されて何年も経ってから書き始めたことは、時間的にも距離的にも遠くなったと感じたことがあったのではないかと指摘し、自分も沖縄に住んでいる間は沖縄について書けなかったと経験を語っていた。
 講演は、人気作家の池澤が、今なお人気の衰えない須賀について語る魅力的なイベントで楽しく聴講させてもらったが、ただ、版元としては格好の宣伝になったものと思われたが、それ以上のものでもなかった。