ABABA’s ノート

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バーンズ財団

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(写真1 バーンズ財団美術館外観)
フィラデルフィアの美術館②
 バーンズ財団の美術館は、フィラデルフィア美術館から都心に向けて坂を下っていった途中にあった。また、この手前にはロダン美術館もあった。
 外観は窓が少なくいかにも美術館のような現代的な建物だったが、内部は古い屋敷のような部屋が続いていてこれが展示室だった。
 バーンズ・コレクションは、医薬品で財をなしたフィラデルフィア出身の実業家アルバート・バーンズが収集したもので、印象派を中心とした作品群は質量ともに世界的なものとして有名。
 バーンズ財団は、これらのコレクションを管理している団体で、当初は、フィラデルフィア郊外にあるバーンズの邸宅に展示されていたが、2年ほど前に現在地に美術館を建設し移転してきたもののようだ。だからだろうか、美術館の入口の標記はあくまでもバーンズ財団となっていて、ミュージアムの文字は見当たらなかった。
 展示を見て回って二つのことであきれた。
 一つはもちろんコレクションの質と量。個人のコレクションとは思われない充実ぶりだ。
 何しろルノアールが181点(これはオルセーを上回り!実に世界最大)、セザンヌ69点、ピカソ46点などと並び、印象派から20世紀絵画に至るまで世界最高水準のコレクションとなっている。

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(写真2 邸宅の室内に作品を並べたような独特の展示)
 印象派好きにはため息が出るほどだが、二つ目のあきれたことは展示方法。どうやら私邸時代の展示がそのまま再現されたようで、室内の壁いっぱいに作品がべたべた飾られている。
 スーラの「ポーズをとる女」の下にセザンヌの「カード・プレーヤーズ」があるといった具合で、ルノアールの作品が十数点もまとめて飾られた壁もある。
 一見何の脈略もなさそうだが、生前、バーンズは1センチたりとも展示場所を移動することを許さなかったという逸話を、いつか何かでどこかで読んだ記憶がある。
 そしてもう一つあきれるのは、展示されている作品にキャプションが一切付されてないことだ。ただ、室内の展示作品を示す数ページのパンフレットが置かれていて、必要があればそれで確認をするというやり方。
 バーンズにはこれでよかったのであろうが、見学者が見ていくにはやや不便を隠せない。
 ただ、まずは作品を見ろ、何かを感じ取れ、そういうことなのだろうかと思われた。不便ではあるが、なるほど作品と対峙して浸るにはいいようだった。たしかに、キャプションを先に読んで作品は見たような気になる人はいるものだ。
 私は平素、美術館で作品を見るときには、まず作品を見てしかる後にキャプションを読んでいるのが習慣だから、これはバーンズ流としていい方法だったのだろう。
 この美術館でも、フィラデルフィア美術館で感じたことと同じように既視感にとらわれた。かつて見たことのある作品が少なくないのである。思い出してみると、20年ほど前になるか、やはり東京でバーンズコレクション展が開催されていたことがあって、その時の印象が残っていたものであろう。
 それにしても、アメリカの富豪というものはすごいものだ。バーンズほどではないにしても、各地の美術館を見ていると、コレクションの少なくない部分が個人のコレクションの寄贈によっている。
 アメリカでは寄付が習慣となっているらしいが、現在の富豪がどれほどの寄付ができるものなのか、知ってみたいものだ。

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写真3 セザンヌ「カード・プレーヤーズ」)

注)作品名は私の翻訳だから日本で流通しているものと合致しているかどうかはわからない。