マラムレシュ写真集
ルーマニアで出版されたみやこうせい写真集である。〝私のマラムレシュ〟とタイトルが付されている。
みやさんは、エッセイスト・フォトアーティスト。1937年生まれ、岩手県盛岡市出身。ルーマニア文化功労章受賞。
マラムレシュとは、ルーマニア北辺の村で、北はウクライナに接する。
巻頭に見開きで大きな写真。雪景色の中に村人が集って何やら市を開いている様子。これはもうブリューゲルの世界ではないか。たった1枚で、というよりもたった1回のシャッターでマラムレシュの自然と生活を描いている。実に魅力的な作品だ。
ページをくくると、村人の生活が描かれている。笑顔が大きい。山間の村らしく、羊が生活の中心にいる様子だ。雪に閉ざされた空間。しかし、不思議なほど明るい。これはもうフォークロアだ。
少女が深い谷の斜面に立って羊番をしている様子の写真。何と詩的なことか。写真を通して作者の情感が伝わってくるようだ。
写真は、大胆な構図が特徴だ。表情が豊かだ。一瞬を鋭く切り取ったようにも思える。しかし、旅行者がたまさかシャッターチャンスを得たというような写真ではないようだ。
本書巻末の解説〝みやこうせいとマラムレシュ〟によれば、みやさんが初めてマラムレシュを訪れたのは1965年のことだったとのこと。たまたま訪れたその村で、みやさんは村人の家に招かれおもてなしを受けたという。
以来、何度もマラムレシュに足を運んだのであろう。これはどこかで読んだのだが、みやさんは百数十回もルーマニアを訪れているらしい。
ある作品などは、年に一度一瞬しか現れない現象をつかまえるべく5年も同じ月日同じ時間同じ場所に通ったなどということもあったらしい。
本書はモノクロ画像だが、本書にはカラー版もあるらしい。それも読んでみたいものだと思った。
(ISBN976-606-8265-24-7)