ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

京都丹後鉄道全線に乗る

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(写真1 丹鉄の中心宮津駅)
丹後半島を周遊
 先週は丹後半島を周遊した。
 丹後半島は、日本海にこぶのように突き出た半島で、近畿地方の北端に位置し、半島の全体が京都府に含まれる。この半島を鉄道で横断し、バスで海岸沿いをぐるっと外周した。

 まずは鉄道。京都丹後鉄道(略称丹鉄)が運行されている。丹鉄は、かつての第三セクター鉄道である北近畿タンゴ鉄道の路線を継承して運行していて、ちょっと細かくなるが、北近畿タンゴ鉄道は第三種鉄道事業者として鉄道施設を保有し、上下分離によりウィラートレインズという会社が第二種鉄道事業者として京都丹後鉄道という名称の鉄道路線を運営している関係になる。
 そのことはともかく、丹鉄が運行している鉄道路線は宮福線(宮津駅-福知山駅間30.4 キロ)と宮津線(西舞鶴駅-豊岡駅間58.9キロ)の二つ。
 3月1日、福知山駅。JR駅に丹鉄が間借りしているような駅で、宮福線は3番線から特急はしだて3号天橋立行き。京都から山陰本線を下ってきた宮福線列車で11時54分の発車。福知山駅は福知山線との合流駅で、私はその福知山線で特急こうのとり5号で着いたら4番線で、ホームは同じホーム向かい同士だった。なお、福知山駅到着直前に右窓に福知山城が見えた。明智光秀が築城したもので、再建天守がすらりと美しく見えた。
 さて、列車は福知山を出ると山陰本線と並行して走り出しすぐに右に別れた。丹後山地の山間を縫うように列車は走っていて、沿線には黒光りする瓦屋根をのせた家ぽつりぽつりとそれでも途切れることなく続いている。途中、大江で停車した。酒呑童子と縁のところである。駅前に鬼の像があったのではなかったか。大江山が左前方に見えている。
 そうこうして宮津12時22分着。ここで宮舞線に乗り換えいったん西舞鶴へと向かう。
 宮津駅は丹鉄の中心で、丹鉄の本社もここにある。随分と久しぶりだが、駅前に降り立ったら、あまり大きく変わっている様子もなく、かつて昼食をとった食堂もそのまま営業していた。
 丹鉄は、福知山駅から宮津駅へとほぼまっすぐに北上する宮福線と、西舞鶴駅から宮津を経て丹後半島を横断し豊岡駅へと至る東西に長い宮津線の二つの路線からなるが、宮津線はさらに宮津を挟んで西舞鶴-宮津間を宮舞線、宮津-豊岡間を宮豊線と区分して愛称している。
 その宮舞線。12時25分の発車。強風のため列車ダイヤは乱れているとアナウンスされていたが、すでに回復に向かっているようで時刻通りの出発だった。
 宮津を出てすぐに左窓に海が見えた。宮津湾である。丹後由良を出て長い鉄橋を渡った。水量も多いし、湾が奥深く入り込んできたのだと思ったが、実際には由良川の河口だった。
 西舞鶴12時59分到着。西舞鶴駅はJR舞鶴線との共用で、立派な駅舎があり、1階の改札が丹鉄、JRは2階となっていた。

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(写真2 西舞鶴駅前のスナックで食べた〝東郷さんのビーフシチュー〟)
 ここで昼食。駅前を物色すると、真正面のスナックに〝東郷さんのビーフシチュー〟と看板が出ていたので迷うことなく注文した。よく煮込んであってなかなかうまい。東郷平八郎は舞鶴鎮守府の初代司令長官だったから舞鶴には縁が深いのだろう。東郷はイギリス駐在時代に知ったビーフシチューを好んだようだ。また、〝東郷さんのビーフシチュー〟から転じて生まれたのが肉じゃがだそうで、何でも牛肉が手に入りにくく、豚肉で代用されて考案されたものらしい。この店の看板には肉じゃが発祥の地と表示が出ていた。
 西舞鶴13時37分の発車。豊岡行き。来たときの折り返し車両で、1両のディーゼルワンマン運転。青い塗色。なお、丹鉄では、観光列車に、アカマツ号、クロマツ号、アオマツ号というのがあって、しゃれた車両デザインに素晴らしい料理を提供し、天橋立などの観光地を巡って人気となっている。
 宮津を出るとすぐに次がその天橋立。列車は、宮津駅を湾奥にぐるっと湾を周りこむように走っている。
 なお、丹鉄は、宮福線が全線電化で、宮津線は宮津-天橋立間だけは電化され、JRからの特急列車が乗り入れている。従って、宮津線の宮津-西舞鶴間、宮津-豊岡間は非電化である。西舞鶴から豊岡へ直通する列車はディーゼルカーで運行されている。
 沿線では梅が咲いている。ただ、平地でも残雪が見られる。まだまだ寒いようだ。丹後半島の付け根あたりを横切るように列車は走っている。
 途中、与謝野駅で列車交換のため長い時間停車したが、列車から降りてみたら、この駅はかつてJR西日本宮津線だったかつては丹後山田と称していて、駅舎に資料室が併設されていた。これによれば、かつては多くの側線留置線を擁した大きな駅だったようだ。また、丹後ちりめんの本場という看板も見えた。
 なお、駅名標には、「丹鉄」のロゴの下に小さくWILLER TRAINS(ウイラー・トレインズ)という表示が見られた。わかりにくい関係だが、鉄道事業者名がWILLER TRAINSで、その運行する鉄道名が京都丹後鉄道というわけである。それにしても、鉄道を傘下に収めながら鉄道事業者名を目立たなくして、地元に愛着のある路線名を表に出すとは見上げた心がけである。
 沿線の田んぼではすでに水を張っているのが見られた。もう田植えの準備なのであろうか。
 そうこうして久美浜を出て25‰の峠を越すと県境で、京都府から兵庫県に入り豊岡に到着した。丹鉄はここまで。山陰本線との接続駅で、二つ先が城崎温泉である。

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(写真3 与謝野駅で列車の交換。左が西舞鶴行き、右が豊岡行き列車である)