ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

歌川国貞展

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(写真1 静雅堂文庫美術館。図書館はこの右手に別棟である)
静雅堂文庫美術館で
 歌川国貞展が静雅堂文庫美術館で開催されている。世田谷区所在。会場へは東急田園都市線二子玉川駅からバスで約10分。
 静嘉堂文庫は、三菱二代目岩崎彌之助、四代目小彌太父子二代によって設立された図書館で、和漢の古典籍の収蔵で知られる。展覧会は敷地内に付設されている別棟の美術館で開催されていた。

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(写真2 展覧会の開催案内チラシ)
 国貞(のちの三代目豊国)は、美人画と役者絵で知られるが、会場には大判錦絵が100点ほども展示されており、いかにも展覧豪華。
 すべて自前のコレクションのようだが、保存状態も良く色彩鮮やかなことが素晴らしい。江戸末期の風俗や市井がつぶさに描かれていて興味が尽きない。
 中には「双筆」とされるものがあって面白い。これは国貞が人物、広重が風景を描いたもので、それぞれの分野で当代随一であったものであろう二人の合作になるもので、興味深い。
 出品点数は少なかったが、大迫力は大首絵。特に「仁木弾正左衛門直則 五代目松本幸四郎 秋野亭錦升 後 錦紅」という作品が良かった。写楽とも違った魅力があった。
 また、美人画では、「当世六玉顔 高野の玉川」という作品の人物は、いかにも〝いい女〟だった。もっとも、こればかりは好き好きのことだが。
 なお、静雅堂文庫は20万冊ともいわれる膨大な古典籍を収蔵する図書館だが、感心するのは、『説文解字』や『康煕字典』などが良好な状態で保存されていることで、明治期、西欧文化摂取に奔走していた時代、じっくりと中国あるいは日本の古典籍を蒐集した慧眼は驚嘆に値する。私はかつてこれらの辞典をここで実際に見たことがあるのだが、不思議な感動を覚えたことを思い出した。
 また、美術品においても、世界に3点しかないといわれる国宝「曜変天目」など質の高いコレクションには目を見張らされる。

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(写真3 「仁木弾正左衛門直則 五代目松本幸四郎 秋野亭錦升 後 錦紅」=会場で販売されていた絵はがきから引用)