ABABA’s ノート

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ユニークな大塚国際美術館

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(写真1 美術館外観)
すばらしいコンセプト
 大塚国際美術館は徳島県鳴門市所在。大塚製薬グループの財団の運営である。徳島からJR鳴門線で約30分、終点鳴門下車。駅前からバスで20分弱。このバスは徳島駅前始発で、徳島空港や鳴門駅を経由し美術館の前にぴったり停車する。
 美術館は、山の斜面に沿って山中をくりぬいてつくられているようで、正面玄関から入って長いエスカレーターを登り切ったところが地下3階で見学順路のスタート。ここから地下2階、地下1階、そして山上の1階2階へと展開している。大変大きな美術館で、延べ床面積が約3万平方メートもある。自前のコレクションを展示する美術館としては日本最大で、ここより大きいのは国立新美術館だけだが、そちらは貸し館専門で、いわば箱があるだけで、独自のコレクションは有しない。
 ここの美術館のユニークなことは、展示作品のすべてが陶板による複製画だということ。つまり、特殊な技術によって陶板に焼き付けたものだが、その複写の完成度がすばらしい。しかも、すべて原寸大である。
 見る前は、何だ、複製画の美術館かと侮りがちだが、実際に作品を目の前にすると、そのリアリティに驚嘆する。実物を見ているのと何ら遜色がないのである。
 もう一つすばらしく、かつ、すごいことは、展示されている作品数が何と1000点を超しているらしい。世界中の名画が集められていて圧巻である。また、教育的見地からも感心することは、作品が古代壁画から世界25カ国190もの美術館が所蔵する現代絵画までも集められているということだ。 
  居ながらにして世界の名画が見られるというわけだが、そのすべてを見て回るのは容易ではない。それほど作品数が多いのである。
 私はこの美術館を見たのはこのたびで3度目だが、初めて来たときは予定時間は1時間しか用意していなくて、ほんのさわりしか見られなかった。2度目のときには2時間の余裕をもってきたが、それでも半分も見られなかった。今回は3時間を用意し、見たいものをあらかじめ選ぶといった具合に作戦を練って駆け足で見て回った。
 しかし、これは私だけのことかもしれないが、これまで一度も目にしたことのない絵画をじっくりと見ればよいものを、ついかつて見たことのある、そこで感動したことのある作品の前に出るとつい足が止まるのである。かつての感動をなぞっているのかもしれないが、私は、世界で随分と数多くの美術館に足を運んでいるから、足の止まる回数も増えてしまった、これはこれで楽しい鑑賞ではあるが、なかなか難しいものである。
 そして、陶板絵画の鑑賞ということについて。いかに完成度の高い複製とは言え、やはり複製ではないか、当初はそのように感じていて、きちんと作品と対置する姿勢に弱かったように思う。それが、二度三度と通っているうちに、作品の存在感までもが感じられるようになってきたのである。
 展示は時代別になっている。印象派とか好みの分野をめがけて一直線に進むのもいいし、順路が大きく表示してあるからそれに従って行けば全体が見られる。ただ、その場合、鑑賞する時間に余裕が必要となる。

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(写真2 圧巻はシスティーナホール)
 いずれの場合でもスタートで必見なのは、システィーナホール。ヴァティカンのシスティーナ礼拝堂がそっくり再現されており、ミケランジェロの天井画や壁画が巨大な空間に迫っている。圧倒的感動である。これぞ陶板複製画の利点でもあるだろう。
 この先の進路は自由だが、私が必ず立ち寄るのが41室のレオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」。しかも、今回訪れたら修復前と修復後の2枚の作品が同室内背中合わせに展示してあった。修復後を見ると鮮やかな色彩がよみがえっていたが、いずれにしても修復前修復後2枚の「最後の晩餐」が見られるのは世界においてもここだけであろう。
 もう一つ、必ず足を運ぶのは89室。1階に位置するのだが、順路をたどっていただけでは見逃してしまいかねない場所で、ここではパブロ・ピカソの「ゲルニカ」が見られる。
 なお、屋外の57室には、モネの「大睡蓮」が展示してあったのだが、池が凍るほどの寒さだった。

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(写真3 修復前修復後2枚の「最後の晩餐」が展示してある。これは修復後)