ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

堂々たる伊予鉄

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(写真1 伊予鉄のターミナル松山市駅)
縦横に路線網
 前夜は結局ホテルにチェックインしたら午前1時を過ぎていて、就寝したのも2時を回っていた。
 それでも、早朝にはホテルを飛び出し、電車に乗りまくりに出かけた。当初予定では、道後温泉にゆっくり浸かり、松山城を見学するはずだったが、市内見物は何度も行っているし、久しぶりに伊予鉄に乗りたくなったのだった。
 伊予鉄道通称伊予鉄は、松山市を中心に四方に路線網を張る鉄道事業者。鉄道線としては高浜線、横河原線、郡中線の3路線、軌道線では5系統の路面電車を走らせているほか、バスやタクシー、航路の運行も行っており、大半の公共交通を営んでいる。ないのは空路ぐらいなものか。堂々たるものである。
 拠点は、松山の中心に位置する松山市駅。鉄道線、軌道線のターミナルであり、ターミナルビルには高島屋などの百貨店も入っている。
 まず鉄道線。伊予鉄では市内を走る路面電車と区別するために郊外線と通称している。ターミナルビルの懐に抱かれるように2面3線のホームがある。
 横河原線は、東に延びる路線。全線13.2キロ。沿線は住宅地。途中、牛渕団地前はその名の通り団地のようで、駅前には大きなショッピング施設が見えた。終点の一つ手前に愛大医学部東口。路面電車やバスの停留所ならいざ知らず、鉄道の駅で東口なとというこういう細かな駅名も珍しいのではないか。よほど大きなキャンパスか、あるいは反対側にも鉄道の駅があるのかとも思われたが、どうもそうでもないようだった。続いて終点横河原。所要21分。
 駅前は、高校生らを送りに来た自家用車で溢れていたほかは格別に珍しいようなこともないようなのですぐに折り返したが、この列車が高浜行きとなっていた。松山市駅を経て高浜線への直通列車なのである。高浜線と横河原線にはこういう運用が多いようだった。
 高浜線に入って一つ目が大手町で続いて古町(こまち)。ここで4両で来た列車が2両切り離された。路面電車との乗換駅で、ここには鉄道線、軌道線を含めた車庫があった。ホームも並んでいる。
 高浜線は北西へと向かう路線で、西衣山(にしきぬやま)でJR予讃線とクロスした。下り列車なのに利用者が多かったが、山西で大半が下車した。港山で左窓に海が見え始めそうこうして終着高浜。松山市からなら全線9.4キロ、26分。横河原からなら約1時間というところだった。
 高浜駅ではすぐ目の前がフェリー乗り場になっていた。中島・ごごしま行きとあった。また、松山観光港にはここから連絡バスが出ているようだった。

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(写真2 郡中港駅ホームの様子)
 次ぎに郡中線。松山市駅から南西に向かう路線で、全線11.3キロ。初め住宅地を走っていたが、途中、重信川を渡って田畑が多くなった。この前後に鎌田、岡田とまるで名字のような駅名が続き、松前(まさき)で大半が降りた。
 郡中を経て終点郡中港。松山市から24分。港が近いようだった。道を1本隔ててJR予讃線の伊予市駅である。
 ここまで、郊外線は、3線とも単線なのだが、定時ダイヤで運転本数も多く利用しやすいようだった。郡中線は3両、横河原線と高浜線は朝夕は4両だが、日中は2両の運用のようだった。いずれの車両も伊予鉄のカラーなのかオレンジ色の車体が大半で、ピカピカに磨かれて美しいものだった。これには感心した。
 一方、路面電車である軌道線は伊予鉄では市内線と呼んでおり、松山城を取り囲むように5つの系統がある。松山市駅が起点で、ターミナルビルの駅前に滞留所がある。なお、松山市停留所は堀に面した通りからはやや奥まったところにあり、堀に面した南堀端から一停留所分ある。
 1系統と2系統は松山市を発着する同じ路線の東回り、西回りで、1系統は松山市を出て南堀端で左折しJR松山駅前を経るルートで、2系統は同じく松山市を出て南堀端で右折し大街道を経るルート。なお、1系統2系統は環状線ではあるが、松山市で行き止まり反転するので、ぐるぐる回っているわけではない。
 ほかに、松山市から道後温泉を結ぶ3系統、JR松山駅前から道後温泉を結ぶ5系統、本町六丁目から道後温泉を結ぶ6系統とあり(第4系統は空き番)、電車は頻繁に往来しており、特にすべての系統が通る南堀端と上一万の間は運転密度が高い。また、この間は松山の目抜き通りを結んでいる。なお、本町線と呼ばれる6系統だけは、日中なら約30分間隔と運転本数は落ちる。
 2系統に乗ってみよう。松山市を出る。500メートルほどか、進んで南堀端で右折する。壕に沿って走っており、市役所前、県庁前と続き大街道はもっとも賑やかな繁華街。高級ホテルやデパートが並んでいる。上一万で道後温泉行きが分岐していき、本線は左折し専用軌道へと入っていく。赤十字病院前などとあり、愛媛大学や松山大学などが沿線にあって、高級住宅街のようだ。住宅の軒がすぐに迫っており、樹木の枝に触れそうでまことに狭く、まるで江ノ電のようだ。古町で高浜線と接続し、その高浜線を横切って宮田町となり、ここから再び併用軌道となりJR松山駅前となった。次の大手町が興味深いところで、ここで軌道線と鉄道線が一般道路上で直角に平面交差している。鉄道趣味世界でダイヤモンドクロスと呼ばれており、日本では唯一ここだけのこと。西堀端を経て松山市となる。
 城北線と呼ばれる上一万-古町間を除き複線であり、一般道路上を走っている割には、軌道敷に入り込んでくる自動車は少ないようで、スムースな運行が図られているようだった。
 なお、市内線では道後温泉を発着で〝坊ちゃん列車〟が運行されており、軽便鉄道時代の列車が観光客に人気である。
 松山はお城と路面電車が似合う町で、伊予鉄の存在は大きいようだった。

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(写真3 蒸気機関車を模した坊ちゃん列車。左奥は6系統本町線の電車)