ABABA’s ノート

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森知英ピアノリサイタルで熱演

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(写真1 演奏を終えてロビーに出てきた森知英さん)
Russian Romance
 11月18日東京オペラシティリサイタルホールで開催された。
 森知英はそろそろベテランの域に入ってきた人気のピアニスト。この頃では室内楽なども手がけるほか、音楽コンクールの審査も行っているなど幅広い活動が注目されている。ベートーヴェン国際ピアノコンクール(ウィーンで4年に1度開催)第4席入賞、ショパン国際ピアノコンクール(ポーランドで5年に1度開催)でデュプロマなどと輝かしい実績を有する。岩手県出身、東京藝大卒。
 ここ十数年来森さんのリサイタルには毎年足を運んでいるが、今年はRussian Romanceという副題を付けて、ロシア人の作曲家の作品を特集していた。昨年は三大B(バッハ、ブラームス、ベートーヴェン)の名品を披露していたし、年々領域を広げかつ深くさせている。
 初めはチャイコフスキーの「四季」。もとよりロシアを代表する大作曲家だが、これはロシアの1年の風物を各月ごとにピアノ曲に仕立てた作品集。12の性格的描写という副題があるらしい。
 10月秋の歌、11月トロイカ、12月クリスマスの3曲を弾いたが、森さんの演奏はそれぞれの季節感を味合わせる演奏となっていた。この中では私にはやはり馴染み深い11月トロイカが情景を思い描けるようで良かった。
 続いてブルーメンフェルトの「左手のための練習曲」。ウクライナ出身の作曲家、ピアニストとして知られるが、繊細な美しさが感じられたし、下を向いていたら片手だけの演奏とは思われない素晴らしい演奏で、森さんのチャレンジには感心した。
 次いでスクリャービンの「幻想曲ロ短調作品28」。モスクワ出身の作曲家でありピアニスト。森さんの演奏は起伏に富んだ内容をきちんと表現していて大きな構想が感じられた。
 最後に4人目はラフマニノフの「前奏曲」。チャイコフスキーを熱烈に崇拝していたことで知られるが、この日は8つの作品が演奏された。このうち、作品3-2が有名だが、私には作品32-5が良かった。澄み切ったシンプルな美しさが際立つ曲といわれるが、実際、美しくてうっとりするようだった。
 チャイコフスキーはともかく、ブルーメンフェルト、スクリャービン、ラフマニノフの三人は作曲家でありピアニスト。そういうことでピアノ曲としての完成度も高いように感じられたし、森さんの演奏はさすがに手練れたものだったが、全般にどちらかといえば好事家好みのリサイタルだった。