ABABA’s ノート

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京都五重塔巡り③法観寺

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(写真1 街の賑わいの中に佇む五重塔)
通称〝八坂の塔〟
 四つある京都の五重塔巡り。三つ目は、いわゆる八坂界隈にあるところから通称八坂の塔と呼ばれ親しまれている法観寺の五重塔(重文)である。東山区所在。清水寺から東山の西麓沿いに北へ坂を下っていくと、二寧坂の坂が尽きたあたり、街の中に塔の頭がひょいと見えた。ちょっとわかりにくいところにあるが、八坂神社方面から来れば高台寺の少し先である。
  街に中に佇むようにあるのが独特の情緒を醸し出している。しかも、塀はぐるっと回っているのだが、境内はさほど広くないようで、五重塔だけでいっぱいいっぱいのようだった。実際には太子堂や薬師堂もあるらしいが。訪れたのが夕方だったこともあって、街には灯が点り京の街並みにとけ込んだ夕景となっていて、情感が深く漂っていた。
 法観寺は、臨済宗建仁寺派の寺院。東大路通を挟んで近隣に建仁寺があるから、その末寺なのであろう。山号は霊応山である。
 五重塔は、1440年に再建されたものだが、最初のものは589年聖徳太子によって建立されており、お寺に掲示してあった解説版によれば、日本で最も古い塔だったとのこと。
 塔の高さは46メートルで、京都では東寺に次ぐ高さ。純和様である。礎石は創建当時のものがそのまま使われているとのこと。
 素晴らしいのは塔内に入れること。この日は平日の夕方だったのでかなわなかったが、週末には通年で中に入って参観できるらしい。しかも、二層目までなら登れるということ。画期的である。京都に限らず大方の五重塔は内部に入れてくれないから法観寺のやり方は素晴らしい。
 内部には、大日如来を初めとする五智如来像が安置されているというから、直接拝める機会はありがたいものであろう。また、境内の薬師堂には本尊の薬師如来のほか日光月光菩薩や十二神将像などが安置されているという。
 もっとも、五重塔は、一般的には必ずしも五階建てになっているもののほうが少ないのだそうで、ましてや一般人を登らしてくれるというのは極めて珍しいこと。
 そう言えば、西安の大慈恩寺にある大雁塔は648年創建の仏塔だが、最上階まで登らしてくれたものだった。日本でも親しみの持てる公開に工夫がないものかと考えたものだった。

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(写真2 夕暮れに独特の情感を醸し出す八坂の塔)