ABABA’s ノート

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特別展覧会「国宝」

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(写真1 国宝展が開催されていた京都国立博物館平成知新館)
京都国立博物館開館120周年記念
 先週は京都に旅行したが、この国宝展を見るのも大きな楽しみだった。
 実に200件を超す国宝が展示されていていかにも豪華。美術工芸品で国宝に指定されているものは現在約900件というから、何と約四分の一が集結したことになる。しかも、展示は絵画や彫刻から陶磁器、漆芸、書、考古品など広範に及んでいたから見応えがあった。ただ、約2ヶ月の会期中4回の展示替えがあって、通期で出品されているもののほうが少ないくらいだったから、目当てのものが展示されていなくて残念なこともあった。
 大変な混雑が続いていると喧伝されていたから覚悟して出かけたのだが、平日の夕方だったせいかさほどでもなく、じっくりと見ることができた。
 注目したもの幾つか。
 雪舟がまとまって展示されていた。秋冬山水図、天橋立図と並んで慧可断臂図が相変わらず断然良かった。慧可が達磨に弟子入りを請う場面で、決意を示すために自分の左手首を切り落として持参しているのが凄まじい。ただ、達磨の表情にはユーモアも感じられて不思議だ。なお、私が訪れたのは第Ⅱ期だったのだが、第Ⅰ期においては、雪舟作で国宝に指定されている6点全作品が展示されていたという。画家で国宝に指定された作品数がもっとも多いのが雪舟なのである。
 彫刻では、12世紀大阪・金剛寺の大日如来座像がどっしりと穏やかな存在感の中にも厳しい眼差しがあって感心した。また、渡来ものだが、中国・唐時代の兜跋毘沙門天立像(東寺所蔵)がすらりと背が高くきりりとした美男ぶりが良く、中国における彫刻の世界がうかがい知れて興味深かった。
 人気が高く長い列ができていたのが曜変天目茶碗(中国・南宋時代、京都・龍光院)。まるで宇宙のかがやきを見るような斑文があってなるほど素晴らしいものだった。なお、曜変天目茶碗は現存するもの世界に三つ(そのすべてが日本にあり国宝指定)しかないもの。
 何しろ国宝ばかり展示されているわけだから枚挙にいとまがないが、好みでいうと、土偶で縄文のビーナス、仮面の女神、縄文の女神が揃って出品されていたのが圧巻だった。これらはいつ見ても不思議な魅力にとらわれるが、初めて見て感服したのは火焔形土器(新潟県十日町市篠山遺跡出土)と呼ばれるもの。縄文時代のものとは思われない造形の美しさがあり、しかもほぼ完全な形で残っていたことに感心した。なお、土偶でこれら4点の国宝が揃って展示されたのは初めてのことだとのことである。

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(写真2 土偶。左から縄文のビーナス、仮面の女神、縄文の女神=会場で販売されていた絵はがきから引用)