独自視点で水族館の魅力掘り起こす
著者は水族館プロデューサー。サンシャイン水族館などを手がけたらしい。
その水族館を知り尽くした著者が、全国の主だった水族館を紹介しているのだが、その視点が極めて独特。それは、水族館は単に子どもの教育や魚マニアのための場であることを超えて、生きるための癒しであったり教養や好奇心を満足させる場であり、今や大衆文化の場だと展開している。
そういう視点で選ばれた水族館を幾つか拾ってみよう。まず、サンシャイン水族館では従来のペンギン展示の常識を覆しており、草原のペンギン、天空のペンギンなどとペンギン本来の野生の形を生き生きと見せているし、名古屋港水族館ではマイワシのトルネードが、躍動感ある芸術のような輝く水塊が魚ではなく命を見せる新時代の展示となっているなどと紹介している。
そして本書の特徴は、全国の水族館をあたかもガイドブックのように羅列しているのではなく、我が国における水族館の歴史を踏まえ、水族館運営の独自性や社会性といったことにまで踏み込んで言及していることであろう。
そして何よりも本書の魅力は、文庫という小さな判型ながら全ページカラーグラビアとなっており、水族館の美しさが読んで楽しいことだ。
著者ならずとも、本書を読めば必ずや水族館に行ってみたくなる、そのような本だった。
(文集文庫)