ABABA’s ノート

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戸田泰生画「街・実・虚」

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(写真1 自身の作品「街・実・虚」と並んで戸田泰生さん)
七十の手習い 趣味が高じて
 上野の東京都美術館で開催されていた純展に出品されていた。
 純展とは絵画の公募展。半世紀近い歴史を数え大変伝統のある展覧会で、今年も200人を超す出品があり大規模な展覧会だった。
 出品者の戸田さんとはかねて昵懇の間柄で、溶接の仕事を通じお付き合いをいただいてきていて、私が駆け出しのころからだからもう45年以上にもなるか、今日に至るも可愛がっていただいている。
 今回の出品作は「街・実・虚」。油彩100号の大作で、若者たちが闊歩している様子が生き生きと描かれている。ニューヨークあたりの街角かとも思われたが、子細に見るとどうやら銀座のようだ。
 緻密な構成で、色彩が豊か。デッサン力に優れているせいか構図に安定感があるし、これは戸田さんの絵画の特徴なのだがストーリー性があって時間の移りまでも感じられる。これは希有な作品と言えるのではないだろうか。
 会場で戸田さんから伺ったのだが、戸田さんは現在81歳。高校大学時代に絵筆を握っていたことはあったものの、会社勤めをしていた間は筆は置いていて、退職した70歳から本格的に描き始めたのだという。それも基礎から学んだらしい。
 戸田さんは、かつての勤め先のOBたちとグループ展を行っていたから、私も もうかれこれ10年来戸田さんの絵を見てきていて、かねてその力強い表現力に感心もしていたのだった。
 それが、昨年のこの純展に出品した作品あたりから画風が変わったように思われた。「街の幻影」というその作品は、何とこの純展の最高賞を受賞していたのだった。文部科学大臣賞や東京都知事賞の上位にランクされる大変名誉なもので、実際、会場全体を見回しても圧倒的にハイカラな絵に仕上がっていた。
 今年の作品も昨年の出品作に続く同じ系譜のようで、いっそうストーリー性があって奥行きも感じられる作品となっていた。
 それにしても、これはもう素人の域を出ているのではないか。もともと好きだったとはいえ、退職を機に七十で始めた絵画、言わば七十の手習いが、趣味が高じたと言えるのか、玄人の域に近づいているというのは達成感があるのではないか、そのようにも思えたのだった。