ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

根室本線旅情

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(写真1 鉄道駅として日本最東端アジア最東端東根室駅。運転される本数も数少ない列車が入ってきた)
秘境駅が連続
 知床岬を訪ねた後は羅臼に泊まり、翌日は道東の岬めぐりを行ったが、日本最東端の納沙布岬を振り出しに根室を経て釧路に至る太平洋岸には魅力的な岬が連なっている。
 そして、これらの岬を連ねているのが幹線道路としては国道44号線で、海沿いには道道根室浜中釧路線が走っており、さらに根室本線が並行している。
 ただ、この日7月4日は、行く先々で深い霧に景観を遮られた。岬巡りにとって難敵は実は深い霧なのである。
 このため、計画していた岬に立ち寄れないこともたびたびで、いつしか楽しみは根室本線の駅を一つひとつ拾いながら走ることとなっていった。
 根室駅を出た根室本線が最初に停車するのが東根室駅。感覚的にはちょっとわかりにくいがここが日本最東端の駅。なお、鉄道の駅としてはアジア最東端でもある。住宅地の中に佇むようにあり、駅舎はなくホームだけがある。折良く列車が入ってきた。11時03分発の釧路行き快速「はなさき」である。もとより乗降客はまったくなく、ホームに立っていた私を見て運転士が戸惑った表情をしていたほどだ。
 次はかつては花咲駅だったが、残念ながら昨年廃駅になってしまった。もっとも、草原に車掌車を利用した待合室がぽつんとあるだけだったが。ここの近くには花咲岬があるはずで、探してみたが見当たらなかった。まさか岬が忽然と消えるはずもないのだが。
 そういうことで現在は東根室の次となる西和田駅も車掌車を転用した駅舎。こういう事例は根室本線、宗谷本線、留萌本線に多い。なお、駅名標の隣接駅表示欄には、そこだけ塗装し直して東根室と表示があった。

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(写真2 原野の中に佇むようにある昆布盛駅。鉄道施設以外に人工物が見当たらない茫漠たる風景)
 続いて昆布盛(こんぶもり)駅。駅名からしてすごいが、原野の中に佇むようにホームがあり、果たして利用する人がいるのかと訝しくなるほどだ。
 次の落石駅にはきれいな駅舎があり、駅前には郵便ポストや公衆電話ボックスもあって生活感が感じられた。もっとも、駅を訪ねて生活感を感じるか否かというのもおかしなものだがそういうこと。
 また、ここには落石岬があって、岬の付け根までは車を向けてみたのだが、その先徒歩となる突端までは霧が深くて断念した。徒歩で30分ほどもあり、道らしい道もないようなところを霧中うろうろするのもいかがなものかと思ったのだった。
 落石駅の次がやはり車掌車が駅舎になっている別当賀駅。続いて初田牛(はったうし)駅には小さいプレハブの駅舎があった。このあたり道道が根室本線と並んで走っているのだが、道道側からはホームに上がれない。かといって周囲に道もないし、よじ登ってホームに上がったが、駅舎側からは未舗装の細い道が通じているだけで、周囲は林と農地のようだが、まったく人家が見当たらない。それにしても、この駅にはどうやってやってくるものなのかどうか不思議だった。車掌車の改造ではなく、ちゃんとした駅舎がある分だけましなようでもあるからなおさら不可解だ。ここも秘境駅と言えるものなのであろうか。
 こうやって一つひとつの駅を拾いながら釧路に向かった。途中、茶内の駅では釧路行きと根室行きの列車が行き違うのを迎えた。ともに14時52分発である。ちゃんとした駅舎があり、根室行きに乗客が二人いた。
 また、厚岸駅は沿線では大きな駅。牡蠣の弁当が有名で、一つ買おうとしたが、売店もなく駅舎内はがらんとしていた。
 根室から釧路間は根室本線のうち花咲線の愛称が付けられているが、運転されている列車本数はほんとうに少なくて上り下りそれぞれ1日6本のみ。
 この区間を車でなぞってみたわけだが、列車に乗っていても茫漠たる風景が広がるだけのところ、車ではなおさら人影も少なく寂寥感が強く、秘境駅が連続するようで根室本線の厳しい旅情が感じられたのだった。

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(写真3 細い道が通じているだけの初田牛駅。道道側から見たところ。周囲に家の1軒も見あたらない)