ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

弘前の弘南鉄道

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(写真1 JR駅と並んでいる弘南鉄道弘南線弘前駅)
弘南線と大鰐線
 北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅からバスで津軽中里駅に出て、津軽鉄道、五能線と乗り継ぎ、ついに弘前へと至った。津軽半島を海峡に近いところから始めて津軽山地を越え、津軽平野を南下、ひたすら半島を縦断したことになる。
 青森県のローカル私鉄その2
  弘前ではまず弘南鉄道弘南線に乗った。弘南鉄道は弘前市を中心に弘南線と大鰐線の二つの路線を運営しているローカル私鉄。両線ともに電化路線である。
  弘南線は、弘前駅と黒石駅を結ぶ全線16.8キロの路線。弘前駅はJR弘前駅と同じ駅ビルの隣同士。なお、この駅ビルは近年新しくなったようだ。
 改札口がごった返している。何事かと思ったら、沿線にある野球場でプロ野球の試合があるのだという。楽天-オリックス戦で、何でもプロ野球の一軍戦が弘前で開催されるのは初めてのことだという。
 6月28日。弘南線は1面2線のホーム。2両の電車が、そういうことで満員。17時30分の発車。ところが、発車して4分後、二つ目の運動公園前駅で大半が下車。ここにはるか夢球場という野球場があるらしい。
 ここから先は通勤通学客の世界。沿線はリンゴ畑と田植えの済んだ見事な田園風景がどこまでも広がっている。ただ、この列車はカーブの少ない平地を走っているのによく揺れる。
 ところが、車両の先頭、運転席のすぐ後ろに、学生とおぼしき若い男4人が手すりにも吊革にも掴まらずに立っている。どうやら、体勢を崩さずにどこまで立っていられるか競争をしているものらしい。足を踏み換えてもいけないものらしく、一人がバランスを崩してしまったが、残る3人は終点まで成功していた。見事なものだ。こういう遊びは、たしか、群馬県の上信電鉄でもあったはずだが、まあ、自慢にはならない。それだけ揺れるということだから。
 館田、田舎館で列車の交換が行われた。また、平賀には車両基地もあり、貨車も留置されていた。なお、列車には愛称がついていて、乗っている列車は「さくら」とあった。車両は7000系である。

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(写真2 黒石市の玄関口黒石駅)
 そうこうして17時59分、終着駅黒石到着。黒石は古い街並みがあったり情緒のあるところなのだが、今回は時間に余裕がなくて18時20分発ですぐに折り返した。
 なお、帰途、岩木山に夕日がかかりとても美しいものだった。こういう瞬間を旅先で迎えると激しく旅情を感じる。

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(写真3 大鰐線中央弘前駅)
 一方、大鰐線には翌29日に乗った。大鰐線は中央弘前駅と大鰐駅を結ぶ全線13.9キロの路線。中央弘前駅は弘前駅とは少々離れている。弘前城や街の中心にはこちらの方が近いかもしれない。駅名の付け方もそうだし、こういう関係は、前橋における、前橋駅と中央前橋駅とに似ている。
 その中央弘前を8時00分に発車。2両の電車、ワンマン運転。乗客はほぼ高校生だけ。弘高下、義塾高校前などと学校名が付いた駅があるくらい。どこに行ってもローカル線は高校生が最大ユーザーだ。義塾高校前では乗客の大半がごっそり下車してしまい、残ったのはたった二人だった。
 千年駅で列車の交換が行われた。弘南線同様この大鰐線も単線である。同様といえば、この列車もよく揺れる。昨日の弘南線のように、競い合っている者たちはいなかったが、難易度は甲乙つけがたいようだった。とにかくこういう列車ではメモを取るのに苦労する。
 沿線はやはりリンゴ畑が多い。奥羽本線を跨いだと思ったら大鰐駅だった。8時29分着。
 大鰐駅は駅舎は離れているがJRの大鰐温泉駅とホームが並んでいる。ここは温泉とスキー場で知られており、駅前には足湯の設備があった。足は入れなかったが、手を入れてみたところとても熱くて、足湯にしては珍しいほどだった。熱い湯が好きな私としてはゆっくり足を浸かっていたいところだったが我慢した。
 ところで、弘前から大鰐へはJR線も通じている。JRと私鉄が並行している路線は全国所々にあるが、私鉄側にとってなかなか厳し経営を強いられている場合が少なくない。ここも、JRなら弘前-大鰐温泉間はわずか3駅11.8キロ、12分程度で、運賃も240円である。これが、大鰐線なら13.9キロに13駅あり30分ほどを要する。運賃も430円となる。きめ細かく停車するから沿線に用があるなら重宝だが、弘前から大鰐に直行する客は少ないだろう。事実、大鰐駅で下車した客は何にも用のないような私を含めて二人だけだった。

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(写真4 右が大鰐線大鰐駅、左が奥羽本線大鰐温泉駅)