ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

知床岬へついに

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(写真1 知床岬の突端。平坦な台地上になっており、後背の高台に灯台がのぞいている)
海路訪ねる
 ついに知床岬をこの目で見た。船上から眺めただけだが圧倒的感動だった。岬好きとしてはどうしても訪ねたい岬なのである。
 踏破したとはいかないところがやや残念ではあるが、知床半島は人跡未踏のところ、人の立入を頑なに拒んでおり、探検家でもない限り陸路で岬の突端に到達することは困難で、海路で行くしかなく、それですらも上陸は叶わない。その海路でさえ、私はこれまでに3度試みて、そのつど船が出なくて撥ね返されてきた。ある年など、快晴なのに沖合は波浪が高いといって欠航となったこともあった。
 7月3日。ウトロ港。オホーツク海に面し知床半島のやや中程に位置しており、半島の反対側は羅臼である。知床観光の拠点であろう。
 道東観光開発が運航する知床岬航路。船はおーろら2号。1日2便あり、乗ったのは午後の便。結構大きな船で489トンあり、400人乗りだという。14時15分のところ10分遅れて14時25分の出航だった。
 船は半島に沿って進んでいる。つかず離れずだが、およそ岸辺から数百メートルほど離れたところに航路を採っている。
 切り立った断崖がつづいている。船がアナウンスしてくれるガイドによれば、断崖の高さは100メートルにもなるという。ただ、この日は曇っていて、知床連山の上部は雲に隠れて見えない。
 奇岩が多い。荒々しく男性的な景観だ。時折滝が現れる。カムイワッカの滝は航路の半分ほど来たあたりだっただろうか。幾筋もの滝を束ねたような幅の広い滝で、なかなか美しくしかも神秘的だ。
 番屋も点在している。サケ漁の季節に使われるものらしい。結構大きな建屋のものもあって、従事する漁師の人数や期間が想像できるようだった。また、熊が頻繁に出没していた。もっとも、船のアナウンスで知らされるのだが、なかなか視認することは容易ではない。

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(写真2 雲の切れ間に見せる知床半島の美しい姿)
 岬までは片道約2時間とのこと。折角だから甲板に立って飽かず眺めていた。ただし、とても寒い。長袖シャツにジャケットを着てはいるが夏物だし、帽子とマフラーも着用しているのだがふるえるようだ。カメラを持つ手がかじかむほどだ。気温は10度未満ではないか。知床の自然の厳しさを垣間見たようだった。
 なお、同じように往復4時間も終始甲板に立っている人がいた。中年の女性で、ちょっとだけ言葉を交わしたが、やはり岬好きのようだ。礼文島のスコトン岬の話などが出ていたからただ者ではない。
 15時30分頃岬が見え始めた。写真で見て知っているが、岬の先端は平べったい台地上になっているはずだから見当がついた。ただ、甲板にいた船員に聞いたらまだ30分はかかるだろうということだった。
  知床半島は大きいのである。これもガイドのアナウンスだが、半島は長さが約65キロ、付け根の幅が約25キロもあるという。20万年前に形成されたものだという。地図で見ると、石槍の鋭い三角形の刃先がオホーツク海に突き出たようにも見える。海岸線の大部分は海蝕崖であろうか。
 16時頃岬の先端に着いた。ついに知床岬を間近に見た。大きな声で叫びたい気持ちを抑えるのに苦労した。やはり突端部分は平坦な台地上になっている。叶わないこととは言え、上陸してみたい気分が強まった。海は穏やかなのである。
 ちょっと小高いところに灯台があった。白と黒のまだら模様である。座標は北緯44度20分27秒、東経145度20分11秒である。灯高は12メートルとあり、実際さほど高さのある灯台とには見えない。また、灯火標高は102メートルとあったが、それほどには思われなかった。
 ただ、船は灯台の真正面には向かってくれず、岬の脇から、つまり灯台を横から見る位置に留まっていて、これははなはだ残念だった。ここまで来たのだから、せめて真正面から灯台を眺めたかったのだった。岬の先端は岩礁が多くて近寄れないのかもしれない。
 帰路は雲が散って時折晴れ間ものぞくようになった。1千メートル級の連山がつづいている。硫黄山1563メートルもくっきりと見えた。ピークが数本重なっていてなかなか厳しい山容だ。
 18時30分ウトロ港に帰港した。ともかく知床岬を見るという念願を果たした。岬好きとしては、この知床岬を見ないうちは、百閒先生の言う、何か片付かない気持ちがしていたから、とても満足した。次は陸路を踏破する可能性を探ってみたいものだ。そういう気にさせる魅力があった。また、岬は海上から見ることこそいいものだということにも気づかされた。(乗船料6,500円)。

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(写真3 時折滝が姿を見せ、番屋が現れる)