ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

銚子電鉄で行く犬吠埼灯台

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(写真1 波浪が岩礁に砕け散る犬吠埼灯台。南側から見た風景)
魅力満点第一等の灯台
 犬吠埼-何と詩的な響きであろうか。
 犬吠埼には銚子電鉄で向かった。6月5日。銚子駅から18分、犬吠駅下車。しゃれた駅舎。銚子電鉄の名物ぬれ煎餅のほのかな香りが漂っている。ここから徒歩約10分。迷うことはない。
 灯台には、門前町のように土産物屋が軒を並べていた。人気の観光地なのである。おそらく日本で最も親しまれている灯台の一つであろう。何しろ最寄り駅から徒歩で気軽に立ち寄れる灯台は少ない。それも第一等の灯台である。
 真っ白な灯塔。背が高く大きい。すっくと建っている。迫力がある。煉瓦造だが大変に美しい。日本に五つしかない第一等灯台の一つである。この場合、第一等とは、使用しているレンズの等級と同じ意味で、最大級のもの。
 灯台に付属している灯台資料館に説明があったが、レンズ本体だけで高さ2.53メートル、直径3.03メートルで、重量は2.65トンにも及び、装置全体では高さが5.15メートル、総重量は13トンにも達するという巨大さ。
 同じ説明資料によると、レンズの種類はフレネル式4面閃光レンズで、灯質は単閃白光、光度は110万カンデラあり、光達距離は19.5海里(約36キロメートル)とのこと。明弧は169度から65度までとなっている。
 設計はブラントンで、灯塔の構造は円形の煉瓦造りとなっている。灯台の高さ(地上-塔頂)が31.30メートルで、灯火標高(平均海面-灯火)は51.80メートル。位置は北緯35度42分28秒、東経140度52分07秒である。初点は1874年(明治7年)とあった。
  灯台は全国に15しかない参観灯台の一つで、灯台の上の方に登ることができる。狭いらせん状の階段を喘ぎながら登ったら、ちょうど99段を数えた。ここからさらに鉄製のはしごをよじ登ってやっと見晴台にたどり着いた。
 とても眺望がよい。灯台はどこも眺望がよいものだが、ここはことのほかいい。両手を広げて余るほどだから240度もの眺望ではないか。
 眼前は太平洋である。その大きさがわかる。水平線がどこまでも伸びて丸みを帯びている。船舶が航行している。小型な船は沿岸寄りを、タンカーなのか大型船は沖合遠くを航行している。
 右に目を向けると屏風ヶ浦から九十九里浜へと広がっている。屏風ヶ浦は垂直に切りたった断崖となっている。
 左は君ヶ浜で、見事な砂浜が続いている。また、後背地に目を移すと、この犬吠埼は、銚子半島の先端部分にあたり、その突端に犬吠埼灯台があることがわかる。

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(写真2 地球の丸く見える丘展望台から見た犬吠埼)
 また、こうした岬全体をとらえるには、地球の丸く見える丘展望台というのがいい。犬吠の駅で、灯台とは反対側の丘の上に15分ほど登ったところにあるのだが、灯台を眼下にそれこそ水平線が丸く見えて絶景である。また、ここからは銚子の街も見えたし、遠く筑波山も望めるらしい。
 灯台は岬の崖上にあって、こわいほどの断崖絶壁ではないが、大海原に突き出た劈頭という爽快感がある。また、足下には岩礁が波に洗われている。灯台は、古来、岩礁が多く海難事故が多発したところに設置される場合が少なくないが、ここもそうだったのであろうか。
 なお、大方の場合、地理的な岬の名称には崎や岬、まれに日御碕のように石偏の碕を当てる場合があるが、灯台名には大半が埼を用いている。これは設置者である海上保安庁の規定のようだが、いずれにしても、岬名も灯台名も同じ埼というのは珍しい。逆に、岬名も灯台名も崎というのはもっと少ないが。
 犬吠埼には何度も訪れている。大晦日ということもあった。ただ、これまではすべて日帰りだった。もちろん泊まるほどの距離でもないからだが、このたびはあえて泊まってみた。のんびり歩きまわりたかったからだが、灯台の様々な表情も見たかった。
 宿も灯台に近いホテルにして、夜にも灯台を見に出かけた。そうすると、日中とはまた違った表情を見せていて、幻想的でありとても風情がある。
 灯台の強い光が暗い海を照らしている。単閃白光だが、計ってみるとなるほど15秒に一度閃光している。海上の船舶からは灯台がどういう光り方をしているかが重要で、灯台はすべて決まった独自の灯質を与えられている。これは目前に光っている灯台が何という灯台か、暗闇の中でもその光り方だけで灯台名が判断できるようにしているからで、この犬吠埼灯台の場合、15秒ごとに白色が閃光するというわけで、30秒ごととか、白色と赤色の2色が閃光するとか全国の灯台は様々である。
 ただ、岬好き、灯台好きではあっても、夜間まで灯台で佇んでいるということも少ないこと。このたびは随分と岬と灯台を堪能できた旅だった。

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(写真3 単閃白光の灯火が15秒ごとに光る犬吠埼灯台。とても幻想的である。灯台はライトアップされている)