ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

映画『娘よ』

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(写真1 映画館で配布されていたパンフレットから引用)
パキスタン映画
 これは何とも珍しいパキスタン映画である。日本初公開とある。各地の国際映画祭で数々の賞を獲得している。アフィア・ナサニエル監督作品。
 カラコルム山脈の懐に抱かれた村。多くの部族がひしめき争いが絶えない。対立する二つの部族間で融和のため婚姻が行われることとなり、こちらの部族の娘を相手の部族の族長に嫁がせることとしたのだ。娘はまだ10歳と幼く、若い母親は涙に暮れる。この母は自分も15歳の時に同じようなことで嫁いできたのだった。
 部族間の取り決めは決して抗うことのできない鉄の掟。背く者には死が待っている。しかし、母親は結婚式の当日娘を連れて村から逃げる。どうしても娘を因習の犠牲にはしたくなかったのだ。面子をつぶされた族長らは母娘を追う。
 必死で逃げる母娘。なりふり構わず激しく追跡する族長ら。途中、長距離トラックに便乗させてもらう。しかし、事情を知った運転士は同乗を拒むが、懇願する母娘の切羽詰まった姿を見て同情する。
 この逃亡劇がこの映画のまずは第一の見どころ。捕まれば殺されることがわかっているから緊張感が高まる。
 真っ白な峰が連なる風景。実に美しい自然だ。何もなければこれほど美しい風景もないものだ。しかし、山中は砂塵舞う荒涼とした自然に包まれている。この二つの対比が実に残酷で、映画を感傷に浸らせないでいる。
 これが第二の見どころで、さらに注目されたのは現代パキスタンの日常生活が描かれていたこと。それは山間部という辺境地帯だから特殊ではあるのだろうがこれが第三の見どころだろう。
  部族は力による支配だ。平気で銃を持ち歩き、人を殺すこともいとわない。茫漠とした自然は貧しさを強調させているが、車もあるし携帯電話も通じている。
 この連想が当を得ているかどうかはわからないが、ISはこういうところから発生し、都会に流れていったものかも知れないと思わせた。こじつけかも知れないが。