ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

花の房総半島横断

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(写真1 菜の花に彩られた上総中川駅付近を走るいすみ鉄道列車)
菜の花の絨毯の上を走る鉄道旅
 房総半島を外房の大原から内房の五井へといすみ鉄道と小湊鐵道を乗り継ぎ横断した。
 春のこの季節、車窓から花を楽しめる路線が日本には各地にいくつもあるが、首都圏から手軽に足を伸ばしていち早い春の訪れを満喫できるのがこの房総半島横断の鉄道旅である。
 花曇り、花冷えなどと実は天候不順が少なくないこの季節のこと、この一週間ほどカレンダーと気象情報をにらみながらうららかな日和を狙って出かけた。折角なら房総らしい暖かい日差しを受けたいもの。
 3月30日、JR外房線大原駅。いすみ鉄道の起点である。いすみ線の駅はまるでJR駅に間借りしたようなたたずまい。それもそのはずで、いすみ鉄道は旧国鉄の木原線を継承した第三セクター。大原駅から上総中野駅を結ぶ全線26.8キロの路線。
 当初はそもそも、現在は久留里線となっている内房の木更津からの路線と結び半島横断線とする計画だったもので、このため、木更津と大原から名を取って木原線と称した。結局は、どちらからの延伸もされずに今日に至っている。
  さて、大原駅。いつにない大変な賑わいである。1面2線だが細いホームが溢れんばかり。皆さん菜の花列車が目当てらしい。団体のグループも二つ三つ見えて、2両のディーゼルカーが満席である。中には中国人のグループも入っている。随分と人気が出たものだ。
 10時56分の発車。列車は黄色。まさしく菜の花色である。ムーミン列車の愛称もある。進むにつれて沿線に菜の花が増えてきた。まるで菜の花の絨毯の上を走っている趣きだ。
 途中、国吉、上総中川、大多喜と下車したが、菜の花の咲き具合だけでみたら、国吉-上総中川間、城見ヶ丘駅付近が最も美しかったと言えるだろうか。
  ところで、大原駅で購入した切符は、「房総横断記念乗車券」という企画切符。五井駅まで乗降自由だが、面白いのは後戻りできない一方通行の片道切符であること。五井駅側からなら大原駅へ真っ直ぐというわけで、いすみ鉄道と小湊鐵道の共同企画である。

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(写真2 いすみ鉄道線(左)と小湊鐵道線が接続する上総中野駅)
 そうこうして上総中野14時46分着。いすみ鉄道の終点だが、ここで小湊鐵道に乗り継げる。山間の小さな駅だが、この日ばかりは大変な人出で賑わっている。駅舎側の片面1線を小湊鐵道、1面2線の片側1線だけをいすみ鉄道が利用している。
 子細にみると、いすみ鉄道線は小湊鐵道線に小湊線側で繋がっているようだ。つまり、両線の直通運転も可能ということになるが、実際、両者間で直通運転について検討はされたようだが実現には至っていない。
 15時ちょうど小湊鐵道線が到着した。この列車も2両編成が乗客でいっぱいになっており、そのままいすみ鉄道線15時02分発に乗り継いだ人が多かった。
  折り返しの小湊鐵道線15時05分発にはいすみ鉄道線から乗り継いだ人が多かったし、結局、大原側からも五井側からも乗り継いで半島横断する乗客が大半だったようだ。
 小湊鐵道は、JR内房線の五井駅と上総中野駅を結ぶ私鉄で、全線39.1キロ。中間の上総牛久あたりからは市原市、千葉市への通勤圏となっており、宅地化が進んでいる。また、養老渓谷といった観光地も控えている。
 上総中野を出て上総大久保駅付近では、一面真っ黄色に彩られた菜の花畑が見られ、圧倒的景観だった。
 私はこの半島横断ルートに乗るのはこのたびが4度目で、このうち大原駅側から乗ったのはこれが初めてだったが、どちらから乗っても魅力的な路線で、途中、いすみ鉄道線なら大多喜駅で下車し城下町巡り、小湊鐵道線なら養老渓谷駅で下車しハイキングなどと様々な楽しみ方があるようだった。

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(写真3 右窓に真っ黄色に彩られた菜の花畑が広がる小湊鐵道上総大久保駅付近)