ABABA’s ノート

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展覧会『土門拳の原点1935-1945』

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(写真1 展覧会開催案内のはがきから引用。はがき中央の写真は「なぎなた訓練 日本赤十字病院 東京麻布」(1938)という作品)
写大ギャラリー
 中野区本町の東京工芸大学写大ギャラリーで開催されている。なお、東京工芸大学は写大(東京写真大学)が前身である。
 土門拳は、昭和を代表する写真家。徹底したリアリズムで知られる。
 土門は、写大に膨大な作品を寄贈しており、写大ではこれらを写大ギャラリー土門拳コレクションとして保存してきていて、特にこの10年近くは毎年コレクション展を開催してきており、今年は初期の作品が展示されていた。
 会場には、藤田嗣治、島崎藤村、川合玉堂ら著名人の肖像や、人形師などの職人、世相、さらに仏像などを対象にした作品約60点が展示されていた。題材の幅広さがいかにも土門らしいと思えた。
 世相を反映したものとしては看護師を描いた一連の作品が印象的で、特に看護師がなぎなたを持って隊列を組んでいる「なぎなた訓練 日本赤十字病院 東京麻布」という作品は衝撃的だった。人命を救う看護師が人を殺すなぎなたの訓練を受けているという一瞬を切り取ったもので、白衣の手に武器を持つという世相に慄然とさせられた。
 また、「広隆寺弥勒菩薩半跏像」(1939)の面相などのように大胆な構図に感心した。なお、作品はすべてモノクロームで、いわゆるゼラチンシルバープリントである。専門的なことはわからないが、背景の黒が際立っていることが特徴と言えるのかも知れないと思われた。

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(写真2 展覧会が開催されていた写大ギャラリーの入口)