クリフトン年代記第6部
第1部の『時のみぞ知る』が出たのが2013年。波瀾万丈の物語が続き、4年を経てついに第6部に至った。
物語としては、第1部が1919年から始まっていて、第6部では1978年まで進んできた。60年近い歳月を経て主人公も相応の年齢を重ねていて、まさしく悠久の流れである。
この間、ハリーとエマ、息子のセバスティアンのクリフトン一家、それにエマの兄でバリントン家のジャイルズがそれぞれに存在を魅力的に大きくしてきている。
エマが会長を務めるバリントン海運、セバスティアンがCEOとなったファージングズ銀行、ジャイルズが議席を有するイギリス国会などを巡って、本拠地ブリストルやロンドンなどを舞台に物語は有為転変の展開である。
第6部で大きな柱は二つ。
一つは、執拗にクリフトン、バリントンを貶めようと画策してきた、バリントン海運前副会長メラー、同重役ノウルズ、ファージングズ銀行前会長スローンの3人の運命が、この第6部においてついに尽きてしまう。
また、3人組と一緒になって、あるいは主導的に徹底した嫌がらせをしてきた、ジャイルズの最初の妻ヴァージニアもまた本作において舞台から姿を消すこととなった。
そしてもう一つの柱である、ハリーが運動を進めてきたロシア人作家ババコフのロシアからの救出は、意外な結末となった。ただ、ババコフはノーベル文学賞を受賞して大きな栄誉を得た。
ここまで書くと、クリフトン年代記も終わったかに思えるが、新たにサッチャーも登場してきているし、物語は一層きらびやかに、スリリングに展開していきそうな予感を持たせている。ストーリーテラーアーチャーの快筆はまだまだ衰えそうにもない。
(新潮文庫上・下)