ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

藤沢周平展

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(写真1 展覧会が開催されている日本橋三越本店の会場入口)
没後20年記念
 日本橋の三越本店で2日から開催されている。
 展覧会は、藤沢周平の回顧展となっていて、代表的作品の背景や作品の系譜などが明らかになっていた。特に展示が藤沢のエッセイなどを通じた具体性を持っているのが特徴で興味深かった。また、作品を武家もの、市井ものなどと分類して構成していたのもわかりやすいのものとなっていた。
 藤沢作品の武家ものの主要舞台である海坂(うなさか)藩について、それが、肺手術の闘病中に投句した俳句同人誌のタイトルだったというエピソードは面白かった。私はてっきり出身地鶴岡あたりからでも引っ張ってきたものかと思っていた。
 会場には、使用していた万年筆や自筆原稿なども展示されていたのだが、それによると、原稿は原稿用紙のマス目をきっちり埋めるように小さな字で書かれていて、藤沢の律儀さ、几帳面さを窺わせるようで興味深かった。また、原稿用紙がコクヨの400字詰めという既製のものを使用しているのも藤沢らしいように思われた。
 また、市井ものや世話ものなどを書くに際し昔の随筆などを材料にすることは稀で、「普遍的な人間感情を扱うからには、現代にヒントを得て江戸時代の小説を書いても格別不都合なことはあるまい」と述べていたことが紹介されていて、藤沢作品の骨格が知られるようで興味深かった。
 会場には出版された文庫が展示されていて、それは76タイトル84冊にも及んでいて根強い人気だったことを物語っていた。
 私も藤沢作品を好んで読んでいた時代があって、会場を巡りながら、どれが面白かったか、印象深かったかと思い起こしていたのだが、『蝉しぐれ』、『三屋清左衛門残日録』などがすぐに思い浮かぶのだが、どうも絞りきれない。
 何よりも静謐さや叙情性に惹きつけられてきたことは間違いないが、藤沢作品は映像化された機会が多くて、原作を先に読んでいたはずなのに、そういう映画やテレビの印象も色濃く残っていて、小説世界のまとまりが一体となって押し寄せてくる。まあ、楽しんでいるのだからそれはそれでかまわないのだが。