ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

純展

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(写真1 戸田泰生氏「街の幻影」=会場で撮影した)

ストーリーと時間を感じさせる

 東京都美術館で開催されている。純展とは絵画の公募展で、今年が46回目という伝統のあるもの。会員には関東地方在住者が多いようで、今回は200人もの作品が出品されていて、大変大規模な展覧会だった。
 私は知人である出品者からの案内状があって上野に出向いたのだが、会場を訪れてびっくりした。何とこの方の作品が最高賞協会賞を受賞していたのである。協会賞は純展では文部科学大臣賞や東京都知事賞の上位にランクされる最高賞ということである。
 戸田泰生氏「街の幻影」。油彩。100号の大作である。晩秋であろうか、大都会の街ゆく人々が描かれている。本来喧噪なはずの街角にあって孤独さが感じられる。
 圧倒的にハイカラな絵で、デッサン力にすぐれ、ディテールもしっかり描き込まれているから画面にストーリーを感じさせるし、時間の動いていることまでも読み取らせている。モンタージュ的な印象で、タッチはまるで違うけれども、ある種、松本竣介の都会を彷彿とさせた。
 戸田さんとは40年来の昵懇の間柄で、私がまだ駆け出しの頃、戸田さんは日鐵で広報を担当してらして、それ以来可愛がってもらってきていてお付き合いが続いている。
 戸田さんは、会社を退かれた後は、趣味の絵画に本格的に取り組まれたようで、近年は、かつてのOBたちとグループ展を開催してきていて、戸田さんはその中心的存在なのだが、年1回の展覧会を拝見すると、戸田さんはすでの素人の域を脱していて、毎年素晴らしい作品を出していらした。
 10年も毎年見てきているからわかるのだが、今回純展に出品した作品はこれまでのものとは随分と画風が変わったように見受けられた。かつては力強さが前面に出たような作品が多かったような印象だったが、今回の作品はより繊細となっていて感動した。

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(写真2 純展会場の模様)