ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

映画『レッドタートルある島の物語』

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(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用)
示唆に富んだ物語
 アニメーション映画である。原作・脚本・監督マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット。スタジオジブリとの日仏合作。
 若い男が無人島に漂着する。嵐で小舟が難破したのだった。小さな島だが、飲み水もあり、林もある。年間を通じて暖かいが、周囲に島影が見当たらない。
 男は筏を組んで脱出を試みるが、漕ぎ出すと得体の知れないものに筏を壊されてしまう。さらに大きな筏を組んでみても結果は同じ。3度目で悪さをしているのが大きなウミガメと知れる。
 ある日、大きな赤いウミガメが砂浜に上がってきていた。このカメが邪魔をしたのだと思った男は、腹いせにカメをひっくり返してしまう。カメは身動きが取れなくなってしまう。
 しばらくそのまま放置していたのだが、かわいそうに思った男はカメに水をかけてやる。そうすると、カメの腹が割れて中から若い女が出てきた。
 男と女は手を携えて暮らすようになり、やがて男の子が誕生する。長い月日が経ち、男と女は老人となり、男の子は青年へと成長する。流れ着いた頃は男は絶望にさいなまされていたが、家族ができた生活はほのぼのとしている。
 空と海の青さが美しく鮮やか。それに満天の星。しかし、無人島での生活のこと、色彩は少なくモノトーンに近い落ち着いた印象を受ける。動きも島の生活のリズムに合っているのかゆったりとしているし、この辺はアニメとして極めて新鮮。時計はないのだが、男の髭が伸び、顔が老けていき、ときの進んでいることを知らされる。
 示唆に富んでいる。観る側に自由に受け止めさせているようだ。セリフがないのに雄弁で、そのことがさらに思索的にさせている。
 穏やかだった生活がある日、突然襲ってきた津波に破壊される。前兆はあったのだ。いつになく波が沖合まで引いていたのだった。すべてがなぎ倒され飲み込まれ、茫漠たる風景となった。
 ロビンソン・クルーソーは帰ることができたが、この男は島から脱出することは二度となかった。
 「鶴の恩返し」がそうだが、日本の民話なら、助けたものから恩を返してもらうことはあるが、いじめたカメの恩返しという話は日本にはない。その後哀れんで水を与えはしたが。
 しかし、やがて青年は海に漕ぎ出したし、女は男が息を引き取るまでそばにいて安らかだったことは、穏やかな結末をもらったようで情緒が安定した。
 なお、余計なことかも知れないが、タートルとは英語でウミガメの意。つまり、赤いウミガメということ。