ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

ムック『鉄道遺構再発見』

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土木的視点の写真集
 ムック形式の写真集で、LIXILギャラリーで開催された同名企画展に併せて刊行された。遺構の写真は土木写真家の西山芳一。ほかに、伊東孝、小野田滋、西村浩が文を寄せている。
 貴重な写真が多い。今日のちょっとしたブームである、いわゆる廃線派が踏み込まないようなところにまで探訪している。
 巻頭の魚梁瀬森林鉄道(高知県)は、往時、3つの路線を有していて、ナローとはいえ、一大鉄道網だったという。1963年に廃線となったが、地元の村おこし運動による保存によって遺構が今日に伝わっており、重要な観光資源にもなっているという。実際、トラス橋やコンクリートのアーチ橋からトンネルなどと遺っている様子が貴重な写真で描かれている。
 士幌線(北海道)のタウシュベツ川橋梁も貴重な写真だ。現在はダム湖に沈んでいるからで、水位によって時折見せる姿は神秘的ですらある。大雪山系を背景に美しい写真で、おそらく西山の代表作であろう。
 鉄道写真としては珍しいものでは、テルファー(テルハ)まで紹介されている。清水港線(静岡県)清水港駅に設置されていたもので、テルファーとは岸壁で荷役に使われるクレーンのこと。よくぞ遺っていたものと思われるが、これなども鉄道ファンでも目を向けないのではないか。
 読んでみて全般の印象は、これは土木の写真集だなということ。だから、取り上げた橋梁やトンネルなどの解説は技術的にやたら詳しい。
 このあたりは写真や解説の文章にも表れており、廃線派も含めて鉄道写真にはない視点だと感じた。
 そういうことでか、写真は写真としての美しさよりも、土木構造物を伝えようとする説明調になっていた。

 なお、本書はその存在を私は最近知ったが、刊行は2015年5月なので念のため。
(LIXIL出版刊)