ABABA’s ノート

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ユッシ・エーズラ・オールマン『特捜部Q-檻の中の女-』

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デンマークの警察小説

 デンマークの警察小説。ここのところドイツやフランス、あるいはアイスランドなどと外国の警察小説に面白いものが次々と紹介されている。本書特捜部Qシリーズについては早くから人気を呼んでいてすでに6作を数えるが、本書はその第1作目。書店に平積みにされていたからその存在はかねて知っていたが、実際に手に取ったのはこれが初めて。
 舞台はコペンハーゲン警察、主人公は警部補のカール・マーク。ある事件で、チームを組んでいた部下のアンカーを失い、ハーディを脊椎損傷で病院のベッドに縛り付けておく生活に追いやり、ひとり無事生き延びた。それが負い目となっている。
 復職したカールを待っていたのは、未解決事件を専門に扱う部署特捜部Q。新設の部署で、あてがわれたのは地下の日も射さない部屋、部下もいない。古巣の殺人捜査課から追い払われたという格好。
 ここで、部下だけはハーフェズ・エル・アサドというアシスタントを確保する。アサドは警察官ではないが、ともかく動き出す。
 初めに手に取ったファイルは民主党副党首ミレーデ・ルンゴーの失踪事件。船上から消えたもので、自殺とも思われたが、動機や背景、経緯がはっきりせず5年が経過するも未解決のもまま難事件となっていた。
 ミレーデは魅力的な女性で、美人でもあり党内外から人気が高い。ただ、積極的な活動で超多忙だが、私生活についてはオープンにしていない。ウフェという精神障害のある弟があり、最大限の対応をしている。
 捜査に当たっている登場人物の造形が面白い。カールは、敏腕の刑事だが、毒舌で必ずしも仲間に好まれない。妻とは別居中。仕事熱心で、何事もないがしろにしない。また、アシスタントのアサドもユニーク。シリア人だが、物語が進むにつれて重要な存在となっていく。結局、特捜部Qのこの二人の存在がこの物語の骨であり肉でもある。
 捜査は行ったり来たりするが、物語はこのあたりの描写を漏らさず進めており、二人の行き詰まりも含めて極めて緻密。
 様々に張られた伏線が思わぬところで表面に出てきて、予想もできないようなラストシーンが待っている。歯ごたえのある作品となっていた。
 それにしても、刑事にはなぜ別居中や離婚経験者が多いのだろうか。マルティン・ベックもそうだった。多忙で家庭を顧みることができないからだろうか。人物造型としてはフロストに似ているだろうか。
(ハヤカワ文庫)