ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

牛山隆信『追憶の秘境駅』

秘境駅は滅ぶのか⁉ 著者牛山隆信には秘境駅訪問家の肩書きもあるほどに秘境駅第一人者。秘境駅は滅ぶのかとの副題があり、廃止と隣り合わせの秘境駅BEST100とある。 秘境駅とは、地域の産業が廃れ、人々が去ったことで、なし崩しに生まれた鉄道駅の形…

池澤夏樹『また会う日まで』

(写真1 写真上が単行本、下が新聞切り抜きの束) 朝日新聞朝刊連載小説が単行本化 朝日新聞朝刊に2020年8月1日から2022年1月31日まで連載されてきた同名小説が書籍化された。連載回数は531回に及んでいたが、単行本も727ページとまこと…

今尾恵介監修『日本鉄道大地図館』

地図変遷に見る鉄道の歴史 日本に鉄道が開業して150年。この150年間を地図でたどったのが本書。ちょうど150点の地図が掲載されている。 本書の魅力は三つ。一つはA3判というその大きさ。見開きにすればA2判という大きさで、上製本の重さがなん…

野口田鶴子朗読『釜石の風を読む』

照井翠エッセイ集 「声で伝える東日本大震災の記憶」CDである。 野口さんは、朗読家。声楽家としてイタリアに学んでいたが、局所ジストニアのため声楽の道を断念、朗読家に転じ、宮澤賢治作品の朗読を手がけ、イーハトーブ省奨励賞を受賞している。現在は…

春を運ぶ花

(写真1 春の香を振りまく沈丁花の花) 春だ!春だ! 待ちわびていた春になった。1年前には気にもしていなかったのに、今年は寒さが身にしみて、寒いのは嫌いだからと閉じこもっていたが、暖かくなってきて外に出ようと気分も明るくなって散策をしていると…

ホワイトデー

(写真1 孫たちに贈ったホワイトデーのプレゼント) お返しは決まって本 3月14日はホワイトデート。ちょうど一ヶ月前の2月14日のバレンタインデーに女性からチョコレートをもらった男性が、そのお返しとしてキャンディなどのプレゼントを贈る日とされ…

佐伯祐三展

(写真1 会場で配布されていたチラシから引用=画中の絵は<郵便配達夫>)自画像としての風景 東京ステーションギャラリーで開催されている。代表作100余点が展示されており、大回顧展となっている。 1年前に開館した大阪中之島美術館のこけら落としで展…

土橋真監修『全国駄菓子屋探訪』

成長と変化が続く 駄菓子屋とは懐かしい。もはや見かけることもなくなったと思っていたが、とんでもない、わずかずつだが今でも増えているそうである。 本書は、駄菓子屋に魅せられて果ては全国の駄菓子屋をこつこつと探し歩いた成果。 それにしても、駄菓子…

日本財団 海と灯台プロジェクト『海と灯台学』

貴重な写真を駆使 灯台学とはやや堅苦しいが、灯台について、その歴史から関わった人物、技術などについて概説されている。 とにかく貴重な写真を駆使して多彩な視点で書かれており灯台を知る上でちょっと贅沢な一冊だ。 本書魅力の一つは豊富で美しい写真の…

ひな飾り

(写真1 わが家のひな人形) 桃の節句の年中行事 3月3日は桃の節句で、女児の健やかな成長を願うひな祭りが年中行事。わが家でもひな人形を飾った。 わが家では、こどもが娘二人だったし、孫たちも五人のうち四人が女の子。そういうことで、ひな飾りを行…

今野敏『審議官』

隠蔽捜査9.5 隠蔽捜査は、キャリア警察官竜崎伸也を主人公とする人気シリーズ。竜崎は警察庁長官官房総務課長から息子の不祥事があって警視庁大森署長に飛ばされていた。官房総務課長はエリート中のエリートで、身分は警視長。対して所轄の署長はせいぜい…

大修館書店編集部編『品格語辞典』

改まった場面で遣う言葉 品格語とは、「ふだんづかいの言葉に対し、改まった場面で使える言葉」とのこと。 いつの時代でも年配の者は特にそう感じるのだろうが、それは世の中の変化に追いついていないだけのこと。 それにしても、この頃の若い人たちの言葉遣…

映画『ある男

(写真1 映画館で配布されていたチラシから引用) 石川慶監督作品 冒頭、きれいに額装された絵。美術館かもしれない。絵には、男の後ろ姿。そのすぐ後にも男の後ろ姿が重なっている。姿見を見ているのかもしれない。しかし、それでは理屈に合わない。さらに…

大沢在昌『黒石(ヘイシ)』

新宿鮫XII 新宿署生活安全課鮫島刑事が主人公のシリーズ。12巻目。第1巻が1990年だったからはや30年を超すロングラン。ただ、新宿を舞台にしながら毎回凝ったストーリーが創りだされて新鮮さが続いている。キャリア警察官ながら内部の抗争により一…

今年も文旦届く

(写真1 今年も届いた文旦) 高知から春が来た 今年も高知から文旦(ぶんたん)が届いた。 世話をしてくれる人がいて高知四万十川流域の生産農家から直接届くのだが、段ボール箱を開けると、柑橘類の香りがいっぱいに広がってまるで春が届いたようだ。実際、…

瀬戸賢一・宮畑一範・小倉雅明編著『[例解]現代レトリック事典』

72の分類で例示 そもそもレトリックとは、修辞のこと。文章を美しくしたり、印象深くしたり、意味深くしたりする文章技術のこと。 本書は、このレトリックについて、アイロニー、引喩、三例法、メタファーなど72の分類にまとめて例解を示している。 一つ…

李泉『一冊で分かる中国史』

読みやすく面白い A5判で688ページもある。まことに大部。しかし、読みやすく面白い。2日間で読み切った。 プロットが物語的だし、通俗的歴史の読み物を心がけているところが読みやすくしている。 しかも、中国5千年の歴史を一人の著者が一気に書き上…

バレンタインデー

(写真1 今年も届いたバレンタインデーのチョコレート菓子) ホワイトデーが恐い 2月14日はバレンタインデー。デパートの菓子売り場を通りかかったらチョコレート売り場にものすごい人だかりだった。もちろん女性ばかりだが、何でもチョコレートの年間売…

春は名のみの~

(写真1 白梅の花) 早春賦の世界 今年は〝春は名のみの~〟とまだ歌わないわね、と家内が言う。 なるほど、春が近づくと「早春賦」を口ずさむのはいつものこと。立春は過ぎたが、今年はことのほか寒いからウグイスではないが歌は思えど声もたてない。 久し…

芦川智編『世界の水辺都市への旅』

都市と水の文化論 現在の都市には、水との歴史がそのまま都市の形態となって現れている例も多く、こうした歴史や都市形成の背景をたどることは、都市の魅力を理解する一助となるとしている。 30を超す世界の様々な都市が取り上げられている。これらは小さ…

AMTECH(アムテック)創刊号

アディティブマニュファクチャリング情報誌 AM(アディティブマニュファクチャリング)とは、積層造形技術のことで、レーザや電子ビーム、アークを熱源として金属などの材料を1層ずつ積み上げて構造体を造形する方法。とくに、3Dプリンターの活用によっ…

節分

(写真1 豆まきに使う鬼の面と福豆) 豆まきで無病息災願う 2月3日は節分。 娘たちも嫁いでいるし、孫たちも就学年齢となって、気軽に遊びに来ることは少なくなって、節分といっても格別の行事は我が家ではないが、家内が鬼の面と福豆を買ってきた。それ…

杉山忠義『テッコツ!』

知られざる鉄骨の世界 鉄骨とは、ビルやスタジアムから電波塔まで建築物の骨組みとなるもので、鉄骨は、鉄工所で鋼材を加工し、それらの部材を複雑な形に溶接し、検査を経て建設現場に出荷されて組み上げられる、と紹介している。 世界一の電波塔東京スカイ…

旧大畑駅の車掌車ヨ8873を目撃

(写真1 旧大畑駅構内で動態保存されている車掌車ヨ8873) 旧大畑駅構内で動態保存 このたびの津軽海峡旅行では、大間から脇野沢へ下北半島をバス移動している途中、旧大畑駅で5分のトイレ休憩があった。 ここは、国鉄から転換した下北交通大畑線の終…

平舘海峡を横切る

日本海峡紀行 (写真1 平舘海峡を進む船舶。陸奥湾と津軽海峡をつなぐ重要な海上交通路である) 下北半島から津軽半島へ 平舘海峡とは、下北半島と津軽半島の間にある海峡。南北方向に延びる海峡で、陸奥湾と津軽海峡を結ぶ。海峡幅は狭くて、最狭部はわず…

大間から脇野沢へ

日本海峡紀行 (写真1 )かつての国鉄大畑線大畑駅だった下北交通大畑出張所) 下北半島を北端から南端へバス移動 函館大間航路で大間に上陸したあとは、下北半島を大間から脇野沢にバスで移動した。大間岬から下北バスでまずはむつバスセンター。ここでJ…

大間航路で津軽海峡を渡る

日本海峡紀行 (写真1 函館大間航路フェリーから見た津軽海峡と遠く大間埼灯台) 本州と北海道を最短で結ぶ 津軽海峡を渡る二つのフェリー航路のうち、青森から函館へ青函航路で向かった帰途は、もう一つの航路である函館大間航路で戻ってきた。青函航路に…

函館湾を守る葛登支岬灯台

日本海峡紀行 (写真1 大型灯台の葛登支岬灯台全景) 独特のレンズと灯質 青森から函館を目指し海路を行くと北上を続け陸奥湾を抜け津軽海峡を渡って見えてくるのが葛登支岬(かっとしみさき)灯台である。函館湾の入口に位置し、ここで進路を右にとると函…

津軽海峡を照らす龍飛埼灯台

日本海峡紀行 (写真1 津軽海峡の西の入口を照らす龍飛埼灯台) 白神岬と対置し海峡入口を守る 海峡に灯台はなくてはならないものだが、津軽海峡が演歌の似合う海峡というなら、龍飛崎は荒々しくも何と詩的な響きか。 岬は概して風の強いものだが、龍飛崎の…

津軽海峡を渡る

日本海峡紀行 (写真1 青函航路を渡るフェリーからみた津軽海峡) 青函航路で函館へ 津軽海峡ほど演歌の似合う海峡もないのではないか。風の強さか、北へ渡るという心情か、寂しさがつのり、心して渡らなければならい覚悟がいるようだ。 津軽海峡とは、本州…