ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

映画『ニューヨーク公共図書館』

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(写真1 映画館で配布されていたパンフレットから引用)

巨大な知の殿堂

 ニューヨーク公共図書館(NYPL)の全貌を描いたドキュメンタリー映画。監督はドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマン。
 冒頭、喧噪なニューヨークの五番街に面した列柱が特徴のボザール様式の重厚な建物が写し出される。これがNYPLである。まるで美術館かと見紛うようだ。
 エルヴィス・コステロへの長いインタビュー。この先も、この映画は様々な人物へのインタビューが挟まれていく。
 早朝の事務室。問い合わせの電話が入る。丁寧な対応だ。広いロビー。吹き抜けの高い天井。広い閲覧室。多数の来館者とまずはNYPLを概観していく。
 パブリック・ライブラリ(公共図書館)とはどういうことか。日本には馴染みのない言い方だが、これは市民に開かれた公共ではあるが、公立ではないということ。つまり、ニューヨーク市立図書館ではないということ。また、純然たる私立でもなく、映画では公民協働だと表現していた。運営費は行政が50%出資し、残りは寄付や民間からの出資だという。スポンサーとの会食の場面があったが、膨大な人数だった。
 とにかく巨大。88の分館があり、4つの研究図書館があって総数92。予算は、正確には聞き漏らしたが34億ドルだったか。
 各地の分館の活動が紹介されていく。就職ガイダンスがあり、パソコン講習があり、ところによっては舞台芸術に取り組んでいたり、黒人文化研究を専門にしているところもあり、ホームレス対策を真剣に議論している場面もあった。読書会ではおばさんたちがガルシア・マルケスに取り組んでいるのには驚いた。
 実に多様な活動で、これが図書館が行うアクティヴィティかと驚くようなことまで含まれている。基本的なコンセプトは〝図書館は本を置く場所ではない〟ということ。
 部内の様々なディスカッションの場面が頻繁に取り込まれている。Eブックへの要求が強いが、デジタル弱者をつくらないためにはどうするか。
 市当局は貸し出し数に注目しているが、人気本は市井でも手に入る。10年後に必要な本がここになくてどんな役割があるというのか。
 映画の時間は3時間25分。私は神田神保町の岩波ホールで観たが、途中に10分ほどの休憩を挟んでいたから4時間近いものとなった。
 然るに、なぜにこうも長い映画が必要だったのか。インタビューやディスカッションの場面が頻繁に挿入され延々と続いていて、映画の半分近くも占めているのではないか。これは、NYPLを描くと言いながら、実はニューヨークの今日的課題を一つひとつ丁寧に洗い出していたからではなかったか。これがワイズマンの狙いだったのだろう。それで、映画では〝NYPLは民主主義の柱だ〟とまで語っていた。
 映画の原題は、Ex Libris(エクス・リブリス)とあった。蔵書票という意味である。日本では蔵書票を日常的に使用する人は少ないようだが、アメリカでは、蔵書票を張ってまでも大事にしていたコレクションを図書館に寄贈するという習慣があるようだ。そういうことから蔵書票には知を継承していくという意味があるようだ。NYPLは1911年の設立以来カーネギーら市民の寄付によって成り立ってきた。寄付の中には蔵書票の張られたコレクションもあったに違いない。
 美術館では、寄贈者の名前が記されている場合にたびたび経験するが、図書館の書籍で蔵書票が張られたものに出会ったらそれはそれでうれしいのではないかと思われた。
 私はかつてこのNYPLを訪れたことがあるのだが、3階にあったメインリーディングルームの広さには感嘆したものだった。アメリカ人の好む比喩を使えば、何とフットボールの競技場の広さを持つ閲覧室なのだった。また、この映画でも取り上げられていたが、注目したのはレファレンスの充実ぶりで、世界中から研究者が訪れているということだった。映画では、研究者に対しアプローチの方法についてまでも助言していた。

 

<参考>

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(ニューヨーク公共図書館外観(上)と閲覧室の一つ(下)=2018年3月21日馬場撮影)

 

近鉄 名古屋線系

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(写真1 湯の山線終点湯の山温泉駅)

近畿地方の鉄道路線⑧

 近鉄名古屋線は、近鉄名古屋駅と近鉄大阪線の伊勢中川駅間を結ぶ78.7キロの路線。伊勢中川駅からは大阪線・山田線・鳥羽線・志摩線を通って伊勢志摩へと伸びている。終点は賢島。名古屋線には湯の山線と鈴鹿線という二つの支線が枝分かれしている。かつてはもっとあったが分離してしまった。
 まず湯の山線。近鉄四日市駅と湯の山温泉駅を結ぶ15.4キロの路線。6番線が湯の山線の発着ホーム。
 近鉄四日市を出るといったん名古屋方面に向かいすぐに左にカーブした。沿線は田園地帯で、田植えの終わった水田のほか、一面黄色くなっているのは麦畑か。5月25日18時05分発と夕方の列車だったのだが、帰宅途中の乗客が多かった。
 列車は鈴鹿山脈に向かっていて、御在所山の麓が湯の山温泉である。なお、鈴鹿山脈は三重-滋賀県境である。
 すぐに折り返したが、温泉に来て温泉に入らずに帰るのは温泉好きとしては後ろ髪を引かれる思いだった。
 日が変わって鈴鹿線。名古屋線の伊勢若松駅と平田町駅を結ぶ8.2キロの路線。駅数は5。
 5月26日10時50分伊勢若松発平田町行き。3両編成でワンマン運転。発車して少しして伊勢鉄道の高架をくぐり鈴鹿市。ここでごっそり降りた。窓から見ただけだが、市役所が見えたほか大きな建物は見えなかった。
 そうこうして平田町。11時01分の到着。鈴鹿サーキットには最も近い駅のようだが、サーキット開催時でもなしそれらしき様子は見られなかった。

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(写真2 鈴鹿線終着駅平田町駅)

近鉄 橿原線系と奈良線系

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(写真1 橿原神宮前駅の堂々たる駅舎)

近畿地方の鉄道路線⑦

 近鉄橿原(かしはら)線は、大和西大寺駅と橿原神宮前駅を結び、京都駅と大和西大寺駅間の京都線とは一直線に結ばれて、京都から奈良へ南北に貫いている。JRの京都線、桜井線と大部分が並行している。
 橿原神宮前駅。橿原神宮を模したような大屋根の立派な駅舎。橿原神宮はここから徒歩10分のところ。
 広い構内を持つ大きな駅。4面8線のホームがあるのだが、ある意味近鉄の発展過程を示していて、2面4線のホームが二つあると捉えた方がわかりよい。
 一つは、南大阪線や吉野線が乗り入れる狭軌の路線。もう一つは奈良や京都方面に向かう橿原線が発着する標準軌の路線。二つのグループはY字のように離れていて、底部には駅ナカに土産物屋や食堂が並んでいる。
 まずは、3番線から橿原線京都行き急行に乗車。沿線には住宅が広がり関西圏の大きさを感じる。平端駅で天理線に乗り換え。この駅は橿原線と天理線はY字型にホームが離れていて、2番線から13時47分発天理行きに乗車。すぐに川を渡った。佐保川と言うらしい。近鉄沿線のいいところは、たいがいの川で土手に河川名を示す看板が設置してること。これはうれしいこと。地図は必ず携行しているのだが、小さな川だとわからない場合も少なくない。

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(写真2 天理駅。右が近鉄線で、左奥がJR線)

 沿線には田んぼが開けていて三つ目が終点天理。JR桜井線にT字型に突き当たるような構造だった。駅前に立っていた地図によれば、まっすぐ進むと天理教本部や天理大学に至るようで、圧倒的に天理教関係の施設が多いようだった。

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(写真3 近鉄奈良線右窓に見えた平城宮跡の朱雀門)

 すぐにとって返し、橿原線直通の大和西大寺行きに乗車。終点で近鉄奈良線に乗り換えて近鉄奈良行きに乗車。大和西大寺を出るとすぐに平城宮跡にさしかかり、右窓に復元された朱雀門が見える。新大宮を経て終点近鉄奈良。JR奈良駅とは離れているが、東大寺や興福寺にも近く奈良観光の中心にあり、いつでもにぎわっている。

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(写真4 奈良観光の中心近鉄奈良駅)

 近鉄で奈良線は創業路線みたいなもので、線区上は布施駅と近鉄奈良駅間になるが、運行上は大阪線に直通し大阪難波・上本町と結んでいる。外国人観光客も多いホームで行き先表示を見ていると、区間急行神戸三宮、普通尼崎、急行大阪難波、急行京都、普通京都、特急京都、普通橿原神宮前、特急橿原神宮前などと各方面行きの列車が頻繁に発着しているのが見て取れる。
 近鉄奈良線で生駒まで戻ったあと、けいはんな線生駒駅-学研奈良登美ヶ丘駅間を往復。長いトンエルで生駒山地を抜けた。路線名にあるように沿線には奈良先端科学大などの看板が見えた。終点はニュータウンの様相だったが、地図で見ると学研奈良登美ヶ丘から少し延伸すれば近鉄京都線に届きそうだった。帰りの電車は地下鉄中央線直通コスモスクエア行きとなっていた。
 生駒からは近鉄生駒線。なかなか乗ることの少ない路線で、私も二度目。生駒駅-王寺駅間を結び、生駒山地の東麓を走っている。生駒山地は大阪と奈良の県境となっており、奈良線にしろけいはんな線にしろ大阪から奈良に向かってくると屹立した山塊に見える。ここをトンネルを掘って奈良線が開通したのが1914年。生駒トンネルは難工事だったようだ。JRの関西本線が奈良から南へ大きく迂回した路線となっているのは、この生駒山を越えることを敬遠したからであろう。
 住宅が続くだけでやや単調な路線で、所要26分で王寺着。

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(写真5 王寺駅。右が近鉄、左がJR)

 この駅はちょっと変わった位置関係になっていて、JRの王寺駅とは隣り合っているのに、同じ近鉄の田原本(たわらもと)線の新王寺駅とは駅前の小さなロータリーを挟んで向かい合っている。
 王寺駅を出ると右隣がJRの王寺駅。正面に新王寺駅が見えていて、この間数十メートル。なぜにつなげなかったのかと思うが、それにしても乗り換え客もいない。
 田原本線は、新王寺駅と西田原本駅間を結ぶ路線距離10.1キロの路線。全線単線。ワンマン運転だった。ちょっと変わった路線で、新王寺駅にしろ西田原本駅にしろ、近鉄線のみならず他のどの線ともつながっていない、言わば独立したというか、孤立した路線。
 西田原本駅では、橿原線の田原本駅に乗り換えたいのだが、少々歩かされた。ここでもなぜ二つの駅をつなげなかったのかとの疑問が消えなかった。
 田原本からは橿原線で大和八木。さらに近鉄大阪線に乗り換え、近鉄難波へ向かった。

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(写真6 近鉄田原本線西田原本駅)

近鉄 南大阪線系

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(写真1 柏原駅に到着した道明寺線列車。左に見えるのはJR大和路線)

近畿地方の鉄道路線⑥

 近鉄(近畿日本鉄道)は、JRグループを除き最長の路線網を持つ私鉄最大手。路線距離が501.1キロに上り、第2位の東武鉄道463.3キロ、第3位の名鉄444.2キロを断然上回る。ケーブル線は除き、ほかに、子会社には四日市あすなろう鉄道、伊賀鉄道、養老鉄道がある。
 路線は、大阪、奈良、京都、三重、愛知の5府県にまたがり、路線数は21を数える(子会社を除く)。
 このたびの近畿鉄道旅行では、これまで一度しか乗っていなかったような端末の小路線を選んでつぶすように乗った。旅行は5月23日から27日までの5日間にわたったが、このうち3日間は近鉄に要した。
 近鉄では、路線数が多いこともあって、これらの路線を系統別に7つにグループ分けしている。これは方面別であることのほか、近鉄の路線網拡大の経緯も背景にあり、同じ社内ながら軌間も標準軌と狭軌が混在している。
 まずは、南大阪線系から。軌間が狭軌(1067ミリ)の系統である。南大阪線(大阪阿部野橋-橿原神宮前)を幹線に道明寺線、長野線、御所線、吉野線の支線がある。
 南大阪線は、大阪の南部を奈良の南部に向けた路線。全線39.7キロ。起点の大阪阿部野橋駅は、JRや地下鉄の天王寺駅とは同じ場所。東口とは道を一つ隔てただけ。しかも、住所は阿倍野区であり、通り名にも阿倍野筋とあり、近鉄の駅名は相当に頑なだ。歴史的経緯があるからだろうが、しかし、これは悪いことではない。便利性はともかく、安易に自分の名前を捨ててしまうよりはよほどいい。まあ、よそ者にはわかりにくいが。
 阿部野橋駅のホームが面白い。3番線で列車を待っていたら、ホームにはすだれが降りているではないか。乗客はそのすだれに向かって並んでいる。どうするのかと見ていたら、列車が入線したらすだれがするすると巻き上げられた。これには唖然とした。ホーム柵だったのである。ホームドアを設置するよりは断然合理的だ。関西は何かと柔軟だ。
 列車は朝の通勤時間帯のこと、満席である。しかし、7人掛けの席に6人がゆるゆると座っているだけ。それで詰めてくれるよう若い女性二人に頼んだのだが、どちらも知らんぷり。もう一度頼んだら猛烈に嫌な顔をしてやっと詰めてくれた。席を譲れとは言っていないのにこれはいただけない。あるいは、この路線は7人掛けに6人で利用するのが常態化しているのかもしれない。
 ともあれ、8時00分発河内長野行き準急。かつて近鉄バッファローズのフランチャイズ球場があった藤井寺などを過ぎて道明寺。ここで近鉄道明寺線に乗り換え。1番線から柏原行き8時20分発。本線を少し戻るようにして右にそれた。2両のワンマン運転。柏原南口を経てすぐに終点柏原。わずか2.2キロ、4分の路線。JR大和路線の柏原駅と共同使用駅で、近鉄としてはJRへの業務委託駅である。島式2面4線のホームがあり、1番線が近鉄、2~4線がJR線だった。1番線の階段口に近鉄の改札があった。見ていると、結構乗り換え客が多いようだった。

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(写真2 長野線富田林付近で右窓に見えたPL教団の塔)

 道明寺に戻って一つ進むと古市(ふるいち)。ここで8時54分発近鉄長野線に乗り換え。大阪阿部野橋発の準急列車で、どうやら長野線は南大阪線からの直通列車が大半のようだ。和泉山脈に向かう路線で、途中に、PL教団がある富田林。ここから単線になった。右に白い大きな塔が見えた。隣に座っていた女性に伺ったら、PLの塔だとのこと。後日調べたら大平和祈念塔と称し、高さは180メートルもあるということ。それにしても、PLと言えば高校野球だが、それも数年前に休部してしまって、今やどうなっているものか。
 随分と山深くなって9時20分河内長野着。古市から12.5キロ。南海高野線との共同使用駅で、南海の方が断然立派。南海の駅員に聞いたら難波まで約30分550円とのこと。また、近鉄は約45分560円と言うことだった。難波と阿部野橋と行き先は異なるが、これではどちらを利用するか微妙なところ。

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(写真3 葛城山への登山口近鉄御所駅)

 再び古市に戻り33‰で二上山を越えて奈良県に入った。尺土(しゃくど)で御所線(ごせせん)に乗り換え。単線で、途中からJR和歌山線と並ぶように進み三つ目が近鉄御所。JR御所駅と並んでいる。わずか5.2キロの路線。乗客に登山姿が多いなと感じていたら、ここは葛城山への登山口だった。

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(写真4 車窓から見た吉野川。奥は吉野川橋梁)

 行ったり来たりを繰り返しながらここでも尺土まで戻り橿原神宮前へ。南大阪線はここが終点。ここで吉野線に乗り換え。4両。単線。吉野口で再び和歌山線と合流し、すぐに離れて山塊へと分け入る。相当に山深い。下市口を出て吉野川が寄り添ってきてそのまま進み、大和上市で直角に右に曲がり、吉野川を渡った。吉野川は和歌山県に入ると紀ノ川と名前を変えるが、すでにこのあたりにして大河である。吉野神宮から最後の急登坂を経て終点吉野。橿原神宮前から25.2キロ。往時の吉野詣がいかばかりだったかと忍ばれた。一大観光地らしく大きな駅舎。広い2面3線のホーム。花見シーズンにはいっぱいになるのだろう。駅前には土産物屋が並んでいる。

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(写真5 吉野山の最寄り駅吉野)

おおさか東線

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(写真1 新大阪駅2番線に停車中のおおさか東線電車)

近畿地方の鉄道路線⑤

 このたびの近畿地方鉄道乗り歩きでは、主に、これまで一度しか乗っていなかった路線を選んでつぶすように乗った。
 そういう中で、唯一の未乗区間が今年3月16日に開通したJR西日本のおおさか東線の北区間である新大阪-放出(はなてん)間。JRそのものについては、すでに全国全線全二周を達成していて、すべての路線を二回以上乗っているのだが、もちろん、おおさか東線についても、先行して部分開業した南区間の放出-久宝寺(きゅうほうじ)間については11年前の開業当初に乗っていて、このたびは後続開業となった新大阪-放出間を含め新大阪から久宝寺までの全線に渡って乗ることができた。
 おおさか東線は、東海道本線の新大阪駅と大和路線(関西本線)の久宝寺駅間を結ぶ路線。全線20.2キロ、駅数は14。JR西日本としては11年ぶりの新線開業である。
  路線は、大阪の東部を南北に縦貫していて、大阪の外環状線の位置づけを担っている。また、直通快速電車を運転して奈良と新大阪を50数分で直接結んでおり、新幹線利用者などの利便性が大幅に向上している。
 5月24日。新大阪2番線6時54分発久宝寺行き。まだ朝が早いせいか立っている人は少ない。新大阪を出ると少しの間東海道本線と並行して進み、南吹田。右にカーブしながら東海道新幹線をくぐり、阪急京都線と千里線を続けて越えるとJR淡路。淀川を渡ると城北公園通(しろきたこうえんどおり)。しろきたとは読みにくいし、大阪城が近いわけでもない。続いてJR野江。
 鴫野(しぎの)で片町線と合流しそのまま放出。なお、鴫野-放出間は、片町線、おおさか東線それぞれに複線の線路を持っており、ここは複々線区間。
 そうこうして放出7時11分の到着。ここまでが新線開業区間。たくさんの乗客があり、時間調整があって7時15分の発車。高井田中央、JR河内永和などとあって、そうこうして久宝寺。7時31分の到着。新大阪から所要37分。なお、この間の新駅は、南吹田、JR淡路、城北公園通、JR野江の4駅だった。
 大都市の鉄道は放射状に延びているのが通例で大阪も例外ではなく、このため、南北に縦断するおおさか東線は、実に数多くの路線とクロスした。
 接続路線だけをみても、新大阪と久宝寺駅を除き、JR淡路で阪急京都本線・千里線淡路駅、JR野江で京阪本線野江駅、地下鉄谷町線野江内代駅、鴫野で片町線(学研都市線)、地下鉄今里筋線、放出で片町線、高井田中央で地下鉄中央線高井田駅、JR河内永和で近鉄奈良線河内永和駅、JR俊徳道で近鉄大阪線俊徳道駅とあって、実に10の路線と交わっている。まあ、見方を変えれば、大阪の鉄道網はこれだけ発達しているということでもある。
 ところで、全鉄道全路線完乗記録のホルダーとしては、新線ができればすぐにでも乗りつぶしたいところ。これまではそうしてやってきたが、然るに、このおおさか東線はなぜに開通から二か月余も経ってしまったのか。サボったわけではなくて、3月末には山田線の復旧に伴う三陸鉄道の全線乗車に出掛けたりしてそれなりにスケジュールが混んでいた。また、名古屋に出掛けたり、東京周辺の鉄道に乗ったりしていた。それでもやっぱり新線はいい。わくわくする。

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(写真2 おおさか東線終点の久宝寺駅ホーム)

南海高師浜線/汐見橋線

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(写真1 南海高師浜駅)

近畿地方の鉄道路線④

 高師浜(たかしのはま)線
 南海本線の羽衣駅と高師浜駅間を結ぶ路線。営業距離はわずかに1.5キロ。他社線や他路線から乗り入れない自己完結型としては私鉄では日本で最も短い路線。駅数は起終点を含め3。全線大阪府高石市所在。

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写真2 羽衣駅3番線高師浜線ホーム。後方は高架化工事が進む本線)

 羽衣駅。本線の2番ホームの和歌山寄りの端を切り込んで設けられた3番線が高師浜線のホーム。2両の電車ワンマン運転。高架化工事が進められており、1番線はすでに供用が開始されているようだ。
 10時29分発。乗客はわずかに3人。発車してすぐに右にカーブしたと思ったら一つ目の伽羅橋。ここで一人下車した。
 次の終点高師浜はもう見えている。駅間距離はわずかに0.5キロ。10時32分着。短い路線ながら立派な駅舎。本線からまるででべそのように大阪湾に向かって突き出た路線。
 何でこのような路線が生まれたのか調べてみたら、戦時中は陸軍の施設があり、戦後も米軍に接収されていたものが、返還後住宅地として再開発されたとのこと。それにしても南海には加太線も含めこのような小さな盲腸線が多い。
 なお、羽衣駅は、JRの東羽衣駅と隣接していて、この東羽衣-鳳間も阪和線の支線としてわずか1.7キロしかない線区。この周辺は実に小さな路線が成り立っているから素晴らしい。

 

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(写真3 岸里玉出駅の汐見橋線ホーム。奥は本線と高野線)


 汐見橋線
 岸里玉出(きしのさとたまで)駅と汐見橋駅を結ぶ全線4.6キロの路線。駅数は6。
  岸里玉出駅は、高野線と本線が合流していてちょっと複雑な構内。1、2番線ホームはちょっとはみ出したようにあり、高野線の上り下り。3番4番が本線の上り下り。なお、高野線も本線も難波が起終点。
 そして5番線はなく6番線が汐見橋方面行きホーム。2両のワンマン運転。16時25分の発車。発車してすぐに左にカーブしたが、津守、木津川などと進み芦原町からはほぼ一直線に汐見橋。
 行き止まりのホームで、1面2線。駅舎は建て替えられたらしく比較的新しい。駅前は汐見橋交差点で、新なにわ筋と千日前通が交差している。目の前、千日前通の地下が地下鉄千日前線と阪神なんば線の桜川駅。近年、この桜川駅との乗り換え客で汐見橋線も乗客が増加してきているとのこと。私もそのように乗り換えたが、なるほど、近鉄奈良方面にしろ阪神尼崎方面にしろとても便利になった。
 なお、この汐見橋線については少々説明がいる。実は、高野線はこの汐見橋駅が起点なのである。現在は直通する列車は1本もなく、すべて難波発着だが、線区上はそのようになっており、その意味では、汐見橋線と通称しているが、高野線の支線とみたほうがよいのだろう。ただし、汐見橋線はすべて線内折り返し列車ばかりである。また、汐見橋駅は1900年の開業当初は道頓堀駅と称していたらしい。

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(写真4 汐見橋駅)

阪堺電車

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(写真1 阪堺電車浜寺駅前停留場)

近畿地方の鉄道路線③

 阪堺電車(阪堺=はんかい=電気軌道)は、その名の通り大阪の南部地域と堺を結ぶ軌道線(いわゆる路面電車)。阪堺線と上町線の二つの路線がある。
 線区上は、阪堺線が恵美須町-浜寺駅前間で、路線距離14.1キロ、停留場数は31。上町線は天王寺駅前-住吉間で、路線距離4.4キロ、駅数は10。軌間は大方の路面電車と同じで1435ミリの標準軌。
 しかし、実際に乗ってわかったことは、上町線は住吉で阪堺線と合流し、そのまま阪堺線を通って浜寺駅前へと向かう。また、阪堺線は逆に浜寺駅前へ直通する電車はなくて、途中の我孫子道折り返しとなっている。
 阪堺線には、終点の浜寺駅前から乗った。路線には、できれば起点から終点へと乗りたいもの。そうすると終着駅の叙情があるのだが、このたびは初めてではないし、乗り歩きの順路都合上やむをえなかった。

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(写真2 国の登録有形文化財である浜寺公園駅旧駅舎)

 浜寺駅前の停留場は、南海本線の浜寺公園駅の駅前にあるのでこの名がある。浜寺公園駅は、現在は高架化工事のため隣接して仮駅となっているが、かつては名駅舎として知られたもの。何しろあの東京駅を設計した辰野金吾の設計になるもの。現在は私鉄最古の駅舎として保存されており、ハーフテンバー洋式など洋風木造建造物が往時を偲ばせている。現在はカフェやギャラリーとして利用されていた。高架化工事が終われば、旧駅舎は玄関として復活するらしい。
 この浜寺公園駅を背にまっすぐ数分進むと右手に阪堺電車の浜寺駅前停留所。こちらも年代物の建物。運賃は一乗車210円だが、一日乗車券を購入した。600円。

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(写真3 3連接のLRT新型車両)

 11時30分の発車。車両はまだ新しい。水色に黄色が配されて美しい塗色。平日の日中なのにそれなりに乗客もいる。また、頻繁に乗降がある。また、途中の停留場で乗り換えた電車は3連接のLRT新型車両だった。
 電車は専用軌道を走っている。時に併用軌道になったところもあったが大半はそうだった。信号も電車が近づくと青に変わるし、だから運行はとてもスムーズ。

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写真4 天王寺駅前停留場)

 そうこうして終点天王寺駅前。終点が近づいたら軌道は緑化され、センターポール化されていた。路面電車の電停とは思われないほどの立派な駅舎があった。起点から約50分。
 天王寺はとてもにぎやかなところで鉄道の要衝。JRは阪和線が起点だし、環状線と大和路線(関西本線)もあり、地下鉄も御堂筋線と谷町線が乗り入れている。そしてこれら各線はすべて駅名は天王寺なのだが、一つ違った呼び名にしているのが近鉄で、道路を一つ隔てただけで同じ場所なのだが、こちらは大阪阿部野橋。日本一の超高層ビルあべのハルカスのお膝元である。伝統のある名称だろうが、大阪駅と梅田駅の関係同様よそ者にはわかりにくい。
 阪堺電車のもう一つの路線阪堺線の起点恵美須町には地下鉄で移動した。

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(写真5 恵美須町停留場のすぐそばにある通天閣)

 恵美須町停留場は、新世界の一角にあり通天閣のすぐそば。100メートルを超す展望棟が目前に見える。東京タワーを設計した内藤多仲の設計。大阪の名所の一つ。

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(写真6 恵美須町停留場構内)

 停留場は駅ビルになっていて3面2線のホームがあり、とても広い。貫禄がある。しかし、乗降客は少なくて、電車本数も1時間に3本程度と少なくて、上町線に比べて劣る。それで、浜寺駅前に直通する電車がなくなってしまったのだろう。

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(写真7 住吉停留場の手前で左から上町線が接近してきた)

 12時57分の発車。我孫子道行き。共用軌道を走っていて、住吉の手前で左から上町線の電車が接近してきた。住吉は二つの路線の合流点。

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(写真8 住吉大社。本殿が四つも並んでいる)

 次の住吉鳥居前がその名の通り住吉大社前。大きな鳥居があり、紅い太鼓橋を渡ると同じ造りをした本殿が4棟も並んでいる。いずれも国宝である。大変由緒のある神社で、初詣客も多く大阪で最も人気が高い。
 住吉鳥居前から三つ進むと我孫子道。阪堺線はすべてここで折り返し。左奥に車庫が見えた。

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(写真9 我孫子道停留場のそばにある阪堺電車の車庫)